金価格はなぜ動く?

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純金積立のような金投資では、ドルコスト平均法で買い付けることからあまり日々の値動きに敏感になる必要はありませんが 、実際のところ価格変動を見ていると心配になってしまうのではないでしょうか。金の値動きの傾向を理解し、不安を少なくして投資を行うためにも、相場に影響を与える主な要因が何なのかを押さえておきましょう。

リスクオフでは金が買われて値上がり傾向

ドル建て金価格の変動は、需要と供給の関係が基本的な要因ですが、世界のさまざまな政治や経済状況にも影響を受けます。 一般的にアメリカの景気が良い時には金が売られてドルが買われます。一方で、不況時や紛争、テロなどで地政学的リスクが高まった時に、リスクの高い株式や金融商品が売られて市中にドルが増え、ドルから金へと資金が流れてドル建て金価格が値上がりする傾向があります。金とドルの間には、一般的にこのような逆相関関係があり、この関係は現在も特に短期的な値動きによく見られます(※国内の金価格を考える際には、さらにドル円為替相場の変動を考慮する必要があります)。

金価格が世界、とりわけアメリカの経済動向に影響されるようになったのは、1971年のニクソンショック以降です。ドルと金の固定比率による交換(金ドル本 位制)が廃止され、金価格は需給関係で決まるようになりました。その後、米ドルと金価格に大きなインパクトを与えた出来事に以下のようなものがあります。

1979年 ソ連のアフガニスタン侵攻

国際的な政治不安により一時的に金価格が高騰。

1985年 プラザ合意

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ドル高是正が承認され、一転してドル安に。金価格は上昇を続ける。

1989年 冷戦終結

国際的緊張の緩和とIT革命によるアメリカの好景気がドルへの信頼感を強め金が売られる。
10年以上にわたる金価格の低迷期へ。

1999年 第一次ワシントン協定

  • 第一次ワシントン協定についてはこちらもご参照ください

金価格の下落を防ぐため、大量の金を保有する各国中央銀行による金の売却量に制限が設けられる。

2001年 米同時多発テロ

ITバブルの崩壊と、米同時多発テロ以降の政治的緊張の高まりを背景に金価格が上昇に転じる(「有事の金」が再認識される)。

2008年 リーマンショック

米ドルの信用が急落。あらゆる金融商品が値を下げるなかで金も一時的に下落するが、いち早く資金が戻り始める。その後、景気回復のための金融緩和策によりドルの市場流通量が増え物価が上昇。金価格も上昇基調が続く。

インフレ対策としての金投資

1970年代のオイルショックによる原油価格上昇も、金価格に大きな影響を与えた出来事のひとつです。オイルショックがもたらした世界的なインフレは金の買いを促進し、金価格を押し上げました。このため「金はインフレヘッジになる」との定説が生まれ「原油価格と金価格は比例する」と見られるようになったのです。これは投資家の間にいまだ根強く残っています。しかし、原油価格が急落した2008年後半以降も、金価格は高値で推移しました。これは各国の景気刺激策によりインフレが引き起こされることへの懸念が投資家の間にあったためとも言われています。

価格決定の基礎となる需給動向

金の供給量は中国など一部の国で生産増が続いてきましたが、全体では横ばい、または減少傾向にあります。かつて世界最大の産金国であった南アフリカは、金埋蔵量の減少に伴う採掘条件の悪化やコストアップ、鉱山ストなどを要因として生産量を減らし、2007年以降は中国が産金国第一位となっています。

一方、需要は近年まで増加傾向にあり、宝飾品需要が約半数を占め、投資用の需要がそれに続きます。なかでも中国やインドをはじめとする新興国の需要拡大が顕著です。これは宝飾品需要に限らず、金の公的需要が増えた結果であり、新興国を中心に外貨準備高の分散を目的とした中央銀行の金保有が積極的に行われているのです。

金ETF(上場投資信託)の登場と金価格

金ETFは、2003年にオーストラリア証券取引所で初めて上場されました。その後各国へと広がり、ニューヨークでの上場で一気に残高を増やしました。これによる金の買い付けが、金価格の上昇に一定の役割を果たすことになります。金ETFで特徴的なのは、中長期的な運用を目的とした年金基金の機関投資家などが買い手の中心と考えられる点です。このように購入された金は一般的に退蔵され、今後も金価格を下支えすると見られています。

このように、金価格はアメリカを中心にヨーロッパなど世界市場に影響力をもつ国々の政治や経済状況に左右されますが、米ドルや株価が下落した時には安定資産としての力を発揮し、値上がりする傾向があります。金の購入が資産防衛の手段ととらえられてきたことが過去の値動きからも確かにうかがえるわけです。金投資のなかでも特に長期的な資産防衛に適していると言われるのが、相場変動リスクを抑えることのできる純金積立です。これからの備えとして、無理のない金額から少しずつ金を買っていくことをおすすめします。

次回は、株式や国債、外貨など「金以外の投資方法と、金との違い」を整理していきます。

  • 本記事の内容は記事公開時(2016年9月)の情報です。