近年になって、最貧国等の債務解消策として、時折浮上するテーマにIMFの保有金売却案があります。
ひとことで言えば、IMFが保有する金を売却し、その売却益を最貧国等が抱える債務返済にあてて救済しようというものです。
IMFの保有金は現在3,200トン程度あり、しかもそれらの保有金は1971年以来1オンス40ドル程度で計上されたままです。
それをたとえば市場価格800ドルで売却すれば、800ドル-40ドル=760ドル×売却重量分が利益となります。
それを最貧国の債務返済の原資にあてられるだろうという考え方です。
ただし、IMFの保有金を市場に放出することに関しては賛否両論あり、なかでも拒否権を持つ米国が長く反対してきたことから、なかなか実現しませんでしたが2009年6月、400トンの売却に関し米上院で可決が見られ、今後は実現に向け加速すると思われます。
過去には1999-2000年にかけて、ブラジルとメキシコが抱えるIMFへの債務を減らすために、IMFの保有金のうち360トンを両国へ簿価の40ドルで売却、そして同時にIMFは同量の金を両国から市場価格(当時360ドル)で買い戻したことがありました。
この同時売買により、ブラジルとメキシコの両国は、売却益をIMFへの債務返済にあてることができました。しかもIMFの保有金は、実質的には360トン分が評価替えされただけで保有量は維持されたことから、金市場への影響は皆無でした。
今後もし仮にIMFの保有金売却があるとしても、おそらくこの手法が採られるのではないかというのが市場関係者の見方です。