我が国で金取引が完全に自由化された1978年4月以降で見ると、ドル建ての史上最安値は99年7月につけた1オンス252.80ドル、円建ての史上最安値は同年9月につけた1グラム917円です。90年代最後の年にここまでの最安値を付けた要因は、主に3つ。ひとつは、90年頃に始まった東西融合と金融IT革命の進展を背景に、米国経済が一人勝ち状態となったこと。ひとつは、欧州各国中央銀行がEU統合に向けて、財政再建の原資を確保する方法として保有金の売却に動いたこと。最後のひとつは、中央銀行の保有金売却の流れを利用して、ヘッジファンドがカラ売り攻勢をしかけたこと。そして金価格の下落に慌てた鉱山会社が先売りに加わったことで、金価格の下落にさらに拍車がかかったことです。
とくに90年代後半は、米国への投資が増え、ニューヨークを中心に株式市場が活況を呈し、「有事のドル」と呼ばれるほど米ドルへの信頼が高まりました。その結果が99年の最安値でした。