豊島逸夫の手帖

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大繁盛の6月

2004年6月25日

国内金価格が税込み1500円を切った今月(6月)は、店頭が大忙しの毎日であった。それまで、金を買いたいと思っていても、一本調子に上がってしまった金価格についてゆけず、ただ見守るだけだった投資家たちが、待ってましたとばかりに買いに入ったのだ。とにかく、近年は金価格があまり下がらない。たとえ、海外が下がっても、円安などで相殺されることが多く、円建てでは更に下がりにくい。だから、税込み1400円台というのは貴重なタイミングであった。 そうこうしているうちに、海外の金価格は400ドル台に戻してしまった。

きっかけは、またしてもイラクである。イラク関連の所謂地政学的要因も、ここ数ヶ月はやや陳腐化の気配が漂っていた。市場がテロのニュースに麻痺していた感がある。ところが、イラク主権委譲前夜とも言える時期に入り、一日で死者70名ともなると、さすがに市場も無視できない。しかも、偶発的ではなく、前政権のゾンビーたちにより計画された同時多発テロである。アルカイダとの関係もちらつく。 さらに、金価格の頭を抑えていたドル金利引き上げ観測もそろそろ折り込まれてきた(市場は利上げがあると決め込み、金を売って、後は来週の正式発表待ちとなっている。=来週のFOMC待ち)。所詮、米金融当局もそれほど急激に金利は上げない、上げられない という事情もある。大統領選挙を控え、金利を早急に上げて、景気回復に水を指すことはできないのだ。

その結果、金価格は403ドルまで反騰した、為替は107円台になったが、円高をこなして、国内金価格も上昇となる。 上記以外にも、上げ材料が出ている。 中国では商業銀行に対する金業務解禁が一段と進んでいる。

現物需要はアジア、中近東全地域に亘り、非常に旺盛である。各地の現地現物渡し金価格は国際金価格に比し、1オンス1ドル前後のプレミアムがついている。(年初は20セントのディスカウントだったのだ。)

従って、円建て金価格も引き続き下がりにくいが、ドル安円高が進行する気配を見せているので、場合によっては、大幅な円高が進んだ日には思わぬ買いゾーンが出現するかもしれない。日々、目が離せない状況となりそうだ。特に、7月に入ると、欧米は早々と夏季休暇モードに入り、取引量も薄くなるので、値動きは荒くなりがちだ。チャンスは思わぬときにやってくる。

2004年