2004年8月26日
長い間世界一の産金国として君臨してきた南アの金鉱山業界が今や存続の危機に瀕している。金価格が3年で50%近く上がったのに、何故と訝る向きも多いだろう。だが、問題の根っこは複雑に入り組み深いのだ。
まず、ランド建て金価格の急落。ランドが対米ドルで急激に高くなり、ドル円で言えば、1ドル110円が1ドル50円近くの円高になったような状況なのだ。いくらドル建て金価格が上がっても、これでは追いつかない。 次に、金資源の枯渇。1970年には年間1000トンを産出していたが、その後一貫して減り続け、昨年はなんと375トンまで減少してしまった。 金鉱山の数も10年前には48の金鉱山会社が上場していたが、今やそれが11社しか残っていない。
加えて、南ア特有の地下数千メートルを掘る採掘形態なので、コストがかかる。黒人の経営参加も難題である。人種平等の原則で、黒人も強制的に雇用せねばならないが、彼等の経営能力は"発展途上"だ。このままでゆくと、白人経営陣は国外に頭脳流出してしまい、黒人だけが、形骸化した金鉱山会社に残されるという事態になりかねない。
このような危機的状況のなかで、大手のアングロゴールド、ゴールドフィールズ、ハーモニー、ダーバンなどの戦略は、国外の金鉱山開発に向いている。オーストラリア、南アメリカ、フィージー、ロシアなどで南アの高レベルの鉱山技術を駆使して新規開発プロジェクトを立ち上げているのだ。資金調達のために、欧米の主要株式市場に上場する傾向もある。最大の金生産国南アの危機的状況は、金価格が上がっても生産が増えないと言う意味での影響を市場にジワジワと与えているので、無視できない。