豊島逸夫の手帖

Page23 原油から金、ユーロから円へのシフト

2004年11月19日

ブッシュ再選を待っていたかのように始まったドル安の流れは、ユーロ買いとなって市場を席捲し、対ドルで1.30の大台を達成するや、今度は円に向かってきた。久しぶりの103~104円台の円高である。 このドル売りの波に刺激されて、ファンド筋も目標達成感のある原油から、相対的に出遅れ感のある金市場に活動の場を移してきた。

ニューヨーク市場の買い残高(ネット)も直近366トンと、かなり高水準にある。今年4月にヘッジファンドが金市場で暴れまわったときにはピークで447トン(4月6日)まで膨れ上がったが、その水準に徐々に近づきつつある。 金価格はといえば、440ドルを突破し、450ドルも間近になってきた。但し、今回は円高の急速な進行により、国内金価格は上がっていない。

欧米市場では450ドルは大きな節目なので、直ぐに突破できるレベルとはいえない。タイミング良く予想外の大きな買い材料でも出現しないかぎり、しばらくは揉み合うと思われる。大統領選挙直後からの外為及び金市場の性急なドル売り、金買いのうねりは やや速すぎる印象が強い。とにかく、ブッシュの"Four More Years"の経済シナリオを先取りした買いが先行しているわけだ。

勿論、市場にとって大きな構造要因であるが、"双子の赤字"(※)という言葉が今や市場内で蔓延しており、短期的にはやや材料の陳腐化の可能性もあろう。500ドルに向かって第二段ロケットに火がつくためには、さらに新鮮でインパクトのある材料が必要と思われる。例えば、イラクではなくイラン情勢が筆者は最近気になる。イランは対イスラエルを意識した核開発を続けているという強い疑惑があるが、欧州主要国は、なんとか話し合いで核拡散防止条約の枠組みにイランを入れようと交渉を試みている。

しかし、ブッシュにいわせればテロ支援国家であるイランは"悪の枢軸"であり、まともな交渉の相手とは看做していない。対して、ロシア、中国はイランが武器貿易などのお客さんという事情もあるから、気を使っている。そんななかで、イスラエルは交渉がムダならばイラン核施設に対する爆撃も辞さずと仄めかし、対してイランはそれなら反撃するという姿勢を示している。かなり物騒なのだ。地政学的要因には慣れっこになってしまった感がある金市場だが、未だ織り込まれていない材料には依然敏感である。


米国の二つの赤字、すなわち「財政収支の赤字」と「経常収支の赤字」のこと。2000年以降、増大の一途をたどっている。このまま赤字が拡大すると、金利の上昇やドル暴落の恐れがあり、世界経済に深刻な打撃を与える可能性があることから、米国の「双子の赤字」は世界の重大関心事になっている。
 

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