2004年12月6日
海外金価格が450ドル前後のレベルまで上がってきたが、問題はこれからである。500ドルへの道は平坦ではない。なんせ、売り方が虎視眈々と機を窺っているからだ。鎮静化したとはいえ一部財政赤字に悩む中央銀行は高値での売却に惹かれるであろう。ヘッジ自粛気味とはいえ鉱山会社も完全にヘッジを放棄したわけではなく、高値での新規ヘッジ設定は十分考えられる。アジア中近東では高値でのリサイクル(回収金)が増えるだろう。安値で仕込んだ投資家も利益確定売りのタイミング探しとなろう。これら四方からの売り攻勢をこなさねばならぬ。
そこで、今後のシナリオだが、二つ考えられる。
このままモメンタム(勢い)で突っ走り500ドルの大台を目指すケース。
ここで430ドル以下への調整売りが入り、しばらく揉みあった後、再上昇するケース。
いずれも上昇トレンドを想定しているのは、ブッシュ再選により、任期4年の間は、金買いの理由に困らないと見られるからだ。"4 More Years"(ブッシュ陣営のスローガン)では、双子の赤字も悪化しそうだし、地政学的リスクも弱まることはなさそうだ。つまり、これまでの金買いの二大要因は構造的に残る。
但し、1・2はその持続性において大きく異なる。
1.のコースを辿ると、逆V字型になる可能性がある。短期投機主導のゼロサムゲームとなり、急騰してもあとの反落がきつい。市場の需給ファンダメンタルズからは完全に乖離した展開となるからだ。
2.のコースの方が、遥かに健全で望ましい。短期的には急落しても、あとじっくり時間をかけて値固めをしたうえで、更に上を目指すからだ。アジア中東の実需も高値圏になれたところで次の展開が始まるわけで、ファンダメンタルズにも支えられるから持続性がある。
それでは、上昇トレンドを持続させる要因として、どのようなファクターが考えられるだろうか。ブッシュ=ドル安については既に述べたが、それ以外の要因を以下に並べてみた。
-中国の対外準備のドル資産離れ、一部金へのシフト(これは前回詳しく述べた。)
-イラク、パレスチナ、北朝鮮に加え、不気味なイラン情勢(日替わりメニューのように様々な地政学的リスクが登場する。)
-原油高、ドル安のダブル効果によるインフレ懸念台頭(特に、原油高一服後は、双子の赤字が誘発する可能性のあるマネタリーインフレ=通貨供給量急増が要注意となろう。)
-ポスト グリーンスパンへの市場の不安(金融の神様仏様グリーンスパン氏の任期が2006年に切れる。市場は後継者に注目しているが、誰がなろうとはっきり言って役不足の感は否めない。グリーンスパン氏の存在感は米大統領をも凌ぐとさえ筆者は思う。彼がいなくなったときの金利の舵取り次第で、金融不安が高まる可能性があるのだ。)
-大型鉱山会社M&Aによるヘッジ買戻し加速化(ヘッジに関する幾つかの調査資料が示すことは、高値にも関わらず、ヘッジ売りの買戻しが着々と進行し、価格の下支えになっていることだ。ちょっと下がるとすかさず買い戻しに入るので価格が下がりにくいのだ。大手鉱山統合の動きが更に拍車をかけている。)
最後に、国内金価格だが、ドル安がテーマであるかぎりは、値動きはおとなしい。しかし、上記の非ドル要因がテーマになると、円高で相殺される度合いが低まり、国内価格も上昇しよう。