豊島逸夫の手帖

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2005年の金価格展望(後編)

2004年12月24日

前回は金市場の外部要因を展望した。今回は金市場の内部要因である、中国の金自由化進展、中央銀行の金売却、鉱山ヘッジを見てみよう。

中国金自由化進展
2005年はいよいよ中国国民に個人ベースで金投資が本格解禁される年となる。人民銀行は、商業銀行の金投資業務を認可する。上海金取引所へも個人アクセスが開放され、先物取引も始まる。これまで、中国国内の金需要といえばほとんど宝飾需要であったが、来年からはそれに投資需要が加わり、今後5年間かけて年間200トンベースから600トンベースへ移行するファーストステージとなろう。なお、中国経済の減速は金にとって売り材料となり得る。現在のGDP成長率9%台からいきなり5%以下に急ブレーキがかかるようだとバブルがはじけ、由々しい状況となろう。しかし、実際には調整もセクター別に進行し、7%程度への巡航速度で、持続可能な成長軌道への移行となりそうだ。

中央銀行金売却
2005年中にフランス、ドイツが年間100トン程度のペースで5年間にわたる金売却を開始する可能性が強い。しかし、第二次ワシントン協定に設定された年間総量500トンには及ばず、売却枠を使い切らない未達となりそうだ。注目は残る金保有大国イタリアがどうでるか。仮に、同国も金売却に踏み切るとすれば、総量は400-500トン程度になるだろう。いずれにしても、市場は500トンという数字を折り込んでおり、それ以下だと、予想を下回る公的売却ということで買いの材料になろう。2004年も中央銀行金売却の報道は市場によってことごとく無視された。この材料が金価格を200ドル台にまで押し下げた90年台とは様変わりである。

鉱山ヘッジ
ヘッジ残高はだいぶ手仕舞われたものの、依然1800トン前後と高水準にある。来年も、価格が下押すたびに、ヘッジ買戻しが入り、相場を支える展開が予想される。ただし、500ドル近くなると、新規ヘッジも設定されるだろうから、ネットでのヘッジ数量は、大幅な買い戻し超過が、かなり是正される可能性はある。ヘッジは必ずしも全滅してどの会社も放棄したわけではない。 なお、南アのゴールドフィールズ社に対するハーモニー社の敵対的買収が成立すると世界最大の金鉱山会社が誕生することになり、鉱山業界のM&A統合に拍車がかかろう。不採算鉱山の切捨てなどの合理化も進み、むやみに生産量を追う経営から鉱脈の質重視の経営に移行することになる。グローバルな生産量は頭打ち傾向が続く。

以上、各論を吟味し、強弱材料を比較すると、相対的に上げ材料が明らかに優る。長期上昇トレンドは変わらず。ただし、上で待っている売りも多く、短期的乱高下を繰り返しつつ、水準を更に切り上げる展開となろう。500-525ドルが目標だが、レンジの上限に近づくとオプションディーラーのパニック的カバーなどが相場のオーバーシュートを惹き起こしがちなので要注意。そこまでゆくと、需給ファンダメンタルズからは乖離した展開となろう。

2004年