豊島逸夫の手帖

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2005年の金価格展望(前編)

2004年12月17日

2005年の金価格を占う上でのポイントをまとめてみた。少し長くなるので、2回に分けて掲載しよう。前編は金市場の外部要因を見てみよう。

ブッシュが現職に留まる限り、双子の赤字解消の兆しはなく、基調としてドルへの信認は更に弱まる。ただし、短期的には外為市場全体のセンチメントが9割がたドル売りに傾いており、ドルの売り超過(oversold)が顕著なので、年の前半はドル安もさほど進展しない可能性あり。市場内で皆が同一方向に向くと、相場は反転しがちなものだ。とはいえ、双子の赤字の構造的要因である米国民の貯蓄性向減少、過剰消費体質は一年やそこらで抜本的に変わるとも思えない。年後半には再び、ドル安、金高が加速しよう。

地政学的リスクも引き続き金相場の上げ材料である。イラク国民選挙をめぐる混乱、アラファト後のパレスチナ情勢、そして不気味な北朝鮮等々日替わりメニューで市場にインパクトを与えるだろう。新たな要因としてイランの核保有問題も気になる。なお、下げシナリオはビンラディン拘束。あるいは、イラク問題終結に向けての電撃的歩み寄り。このシナリオは今の市場が全く想定しておらず、折り込まれていない。

ポストグリーンスパンの不安感も無視できない。グリーンスパンの任期は2006年初頭に切れるので、来年はその後継者を巡って市場に憶測が飛び交いそうだ。誰がなっても、金融の神様と言われた前任者に比し見劣りがするだろうから、市場には不安感が強まろう。特に、米経済指標を睨みながら、巧みに金利水準の微調整をやってのけるのはグリーンスパン以外考えられないからだ。

金利も引き続き重要なポイントである。利上げピッチが早すぎる(overkill=デフレ懸念)シナリオ、または、利上げが後手に廻るリスク(インフレ懸念)シナリオが金価格には買い材料となる。デフレでも信用破綻の連鎖が実物資産への回帰の誘因となるのでデフレヘッジの金買いもあるのが最近の現象。デフレは金売りという"常識"は一昔前の話しだ。それでは、金が売りになるシナリオはと言えば、FRB議長が金融政策の舵取りを間違えず、デフレにもインフレにもならず、安定した雇用と物価動向そして持続的経済成長=ソフトランディングを実現させる場合である。そうなれば、資産運用も株、債券などの伝統的資産のみで足り、金などのヘッジ資産の出番は無い。

ドル短期金利水準に関しては、2%台であれば、歴史的超低金利水準の是正に止まるが、利上げピッチが0.5%刻みで拡大したり、3%を超えて加速が予想されるようだと、金には売りプレッシャーがかかろう。相場も短期的に400ドルを割り込むような事態も想定される。そこまで安くなれば、直ちに現物買いが集中し、買い支えられるだろうが。(この項、次週に続く

2004年