豊島逸夫の手帖

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Goldilocks(ゴールディロックス)

2005年3月8日

前回更新時に述べた"金市場の春一番"現象以来、金価格は430ドル台半ば、に張り付いたまま殆ど動きが無い。 その間、株価は日米ともに好調。株が良いときは、概して金市場は静かである。 先週の雇用統計も、米経済がGoldilocksといわれる理想的均衡状態に近いことを示唆する数字であった。熱すぎず、寒すぎず、丁度いい塩梅の経済状況のことを米国ではGoldilocks Economyと言う。インフレもなく、デフレでもなく、その中間というような意味合いである。このような時は、株、債券、預金など所謂伝統的資産のポートフォリオで充分。金などのヘッジ資産の出る幕は無いという解釈となり、金市場は静かになるのだ。

つまり、先週の新規雇用者数は262,000人で事前予想レンジの上限に近く、順調に雇用が進んでいることを示唆した。しかしながら、同時発表の失業率は5.4%と0.2%上昇したことで、経済過熱(インフレ)の懸念は薄いと理解された。即ち、適度の雇用と抑制されたインフレの下での経済成長が持続する限り、Goldilocksの最適均衡状態に近いというわけだ。以上、直近の市場状況を説明するために述べたが、これはあくまでも直近の短期的見方である。

米経済は経済成長というフローが好調でも、ストック面で双子の赤字という爆弾を抱えていることを忘れてはならない。いくら羽振りが良くても、それが借金の山の上に成り立っているのでは、個人といえども国家といえども何時か"臨界点"が来る。 投資家としてはGoldilocksが到来し長期継続してくれることが最も望ましいが、それが楽観論である限りは、ヘッジ資産も必要なのだ。

2005年