豊島逸夫の手帖

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金価格450ドル突破

2005年9月16日

海外は455ドルまで急騰し、国内も税込み小売価格ベースで1700円突破。米国勤労感謝の日の週末(レーバーデー ウイークエンド)が終わり、欧米市場も一斉に秋の陣に突入するや、予想通り金相場も動き始めた。新高値への挑戦である。

今回の上げの特色は実需主導型ということ。これは珍しい。

通常、実需の買いというのは、一件あたり数キロとかせいぜい数十キロ単位であり、それが短期間に相場を引っ張るようなパワーはない。しかし、ちりも積もればなんとやら。まとまって、大きなかたまりになるや、相場にもジワリと影響を与える。前回本欄で紹介した最新実需レポートは、その大きなかたまりの存在を実証した。そして、市場も素直に反応した。今回のもう一つの特色は、その影響のベクトルである。通常は、実需が相場レンジの下値を支えるのがせいぜいなのだが、今回は、相場を新高値の方向に押し上げる働きを見せているのだ。

そこには、需要の堅調ぶりが秋口も継続するとの読みがある。"高値にも関わらず、インドの実需は絶好調。5月の婚礼シーズンに集中的な需要が見られたが、これから秋口には10月の同シーズンが待ち構えている。"同レポートの発表後、こんな外電報道が目立つ。

なお、実需以外の要因としては、さすがに原油高騰がここまで続くと、市場にもインフレ懸念が台頭し始めたこと。投資家自身の生活のなかで皮膚感覚で石油価格値上げが顕著になると、これは無視できなくなる。

但し、450ドル以上になると、多くの売り手が虎視眈々と待ち構えていることも事実だ。投資家の利益確定売りは勿論、リサイクルの売りも出てこよう。GFMS統計からは、ここまで価格が上がっても、更なる高値期待から、通常増えるはずのリサイクルが控えられてきたことを伺える。ということは、これから上がれば、いつかはそれが出てくるということ。中央銀行の売りも、高値に誘われて想定外の国から出る可能性もある。

価格上昇のパターンとしては、おそらく、一旦パーンと跳ね上がって、そののち、ドサッと売られ反落、というような少々荒っぽいサイクルを繰り返しつつ、これまで同様、底値が切りあがってゆくのではないだろうか。

なお、そのGFMS社が、保守的な同社としては珍しく、価格予測をはっきり打ち出している。年内480ドル、来年は500ドル突破。下値は420-430ドルというものだ。もし、430ドルに下がれば、実需買いが集中すると予測している。

2005年