2005年7月26日
今回の切り上げの目玉のひとつが、通貨バスケット方式の導入である。お子様ランチみたいに、色々な通貨が盛り込まれて、対人民元交換比率設定のベンチマークになるわけだ。そのメニューの通貨別内訳は発表されないが、市場では、これにより、ドル離れが加速されると見られている。中国の外貨準備の通貨別保有比率は、現在、ドル65%、ユーロ20%程度、その他が円、ポンド、カナダドルではないかと推測されているが、これが、将来的にドル30-40%、ユーロも同じく30-40%になるのでは、との観測もある。もし、そうであれば、これは外為市場に大変なインパクトを与えよう。なにせ同国の外準は7000億ドルを超え、来年には1兆ドルの大台突破などと騒がれているのだから。
そこで、金市場の注目は、その対外準備資産の多様化のプロセスに金が入ってくるかということだ。
既に、21世紀に入ってから、中国は金準備を400トンから600トンへ200トン積み増した実績がある。といっても、金額ベースで換算すれば大した量ではないが、大した額ではないからこそ、その程度であれば、更に金保有が増やされる可能性はあるとも言えよう。数百トンの金でも、ワシントン協定の年間売却枠が600トンなのだから、市場へのインパクトは充分ある。何と言っても、公的金売却ではなく、公的金購入ということになれば、市場のセンチメント面でも明るい材料になることは間違いない。 保有通貨比率は外部に発表されないが、公的金保有量は定期的にIMFへ報告され、発表される。
なお、中国にとっての金保有の意味は、経済上の国家安全保障にある。中国が対外準備資産の多くをドルで保有することは、ドル経済圏の傘下に入ることにもなりかねないリスクがある(他方、巨額の米国国債を保有することは、米経済の首根っこを押さえる意味もあるが)。かといって、ユーロの傘下に入ることにも抵抗はあろうし、まして円の傘下などは論外である。そこで、金が便利な点は、無国籍の通貨、ナショナリズムの匂いのしない通貨である、ということだ。そこで、膨張する外準の一部を金で保有することは戦略的に充分意味あることなのだ。
今後のIMF統計に注目したい。