2005年5月16日
しばらく、本業が多忙ゆえ、更新を怠った。読者の方から、病気かとお気遣いいただいたが、本人は至って元気である。ただ目まぐるしい。
さて、金業界で最も権威あるGFMS金年報最新版が発表されたので、そのなかから注目点をまとめてみた。
◎新産金が2593トン(2003年)から2464トン(2004年)へ128トンも急減。なんと1943年以来の下げ幅とのことだ。金は有限な資源なのだということを物語る数字である。インドネシアの金鉱山での事故という一過性要因もあるので、この減少が続くことはないだろうが、今年以降も少なくも増えることはあまりなさそうだ。これまでは、金価格が上がれば、増産―供給過剰―価格下落というサイクルを繰り返してきた。その意味では、この現象は業界の常識を打ち破ったといえよう。
◎もうひとつの供給サイドの要因である中銀売却も、617トン(2003年)から478トン(2004年)へ急減。対外準備資産としてドルばかり貯めこむ弊害を各国政府が認識し始めたことで、金売却に対しても慎重になってきたようだ。2005年は500-550トンへ増えそうだが、それでも2003年の水準には及ばない。第二次ワシントン協定に定められた年間500トンの年間売却枠のほぼ想定内と言える。
◎ヘッジ売りの急減も目を引く。既に2000年からネットではヘッジ売りよりヘッジ買戻しが上回る状況が続いているが、2004年にはその買い超過も442トンに達した。(2003年には279トンであった。) 鉱山会社の合併統合などによりヘッジ戦略が見直され、多量のヘッジ縮小(=ヘッジ売り解除=買い戻し)が生じたためである。2005年は買い超過も300トン程度まで減る見込みだ。ヘッジ売り残高もピークの3428トン(1999年)からはだいぶ消化されたものの、依然、1779トン(2004年末)が残っている。
◎実需面では宝飾需要が2481トン(2003年)から2610トン(2004年)まで回復した。1997年に記録した3300トンには未だ及ばないが、インド、中国、トルコなどが健闘しており、400ドル以上でも新規実需買いが活発に出るようになった。価格の上昇局面で、需要も同時に増えるという、これもまた、従来の業界の常識を覆す現象がおきたことが注目される。開発途上国市場の裾野が広がり、女性の社会進出なども追い風になっている。
◎投資需要は欧米で減り、アジア中近東で増えるというまだら模様となった。欧米は投資家による短期的利益確定売りが相次ぎ、売り買いネットで81トンの売り超過。(2003年は699トンの買い超過を記録したので、ここの振れが非常に大きい。)かたや、途上国市場では、178トン(2003年)から246トン(2004年)へ増加。長期的金保有のため、徐々に買い増すパターンの投資家がアジア中近東では多く、欧米の投機家が売り手仕舞いに入ったところを、彼らがすかさず買いに入る様子が見て取れる。欧米の投機家も売りが一巡して、新規買いを入れやすい状況になったとも言える。
◎これらの需給ファンダメンタルズをふまえたうえで、GFMS社の見通しとしては、非常に慎重な言い方ながら(意地悪く言えば、どちらともとれる書き方だが)、ドル高、金利高などで、最悪350ドルも無しとはしないが、その可能性は低いとし、400ドル台は実需で支えられようと述べている。逆に、投資需要が活発になればポートフォリオの多通貨分散の結果、500ドルもありとしている。