2005年6月17日
ユーロの将来に黄色信号がともって以来、ドル全面高にも関わらず、金価格も急騰している。昨晩(6月16日)のNY市場では7ドル上昇し、436ドルをつけた。そこで、早くも、ドルと金の逆相関関係はどうなったのだ、という議論がアナリストの間で盛んに展開されている。
たとえば、"ドジョウすくい説"。そもそも、市場で言われる相関関係などは、それを確認し、掌握したと確信した瞬間に、スルッと手元から逃げてゆくものだ、という冷めた見方だ。かのミルトン フリードマン教授なども同様の見方をしていたとのこと。
しかし、筆者は、この従来からの逆相関が崩れたとは思わない。相場は生き物だ。今までにも、ドルと金が独立して動いた時期が何度もあった。長い時は数ヶ月続いた。
なお、今回、注意が必要なのは、ドル全面高といっても、市場関係者がドルを本当に評価して買っているわけではないことだ。つまり、ドル安ヘッジが最早不要だから、金は売り払うという状況ではないのだ。ユーロショックの反動でドルにマネーが一時逃避しているに過ぎない。ドルへの根源的な懐疑感は容易に消えるものではない。ユーロを嫌ったマネーが、だからといってドル本格回帰にも踏み切れないでいる。そこで、その一部は、第三の選択肢として金へ向かう。したがって、直近の金高は、ドル安によってもたらされたものではないが、ドル不安の一つの現れとは言えよう。
よく、金にはマネーとモノとの二面性があると、教科書的に言われる。そして、近年は、マネーの側面が大きくクローズアップされてきた。しかし、通貨に対する全面的不安感が漂うなかで、今回の現象は、モノとしての金へ市場の軸足が移る兆候かもしれない。奇しくも、昨晩は、原油、銅そして金のコモディティー トリプル高であった。また、米国、スペイン、中国、南アなど世界各地で不動産ブームが勃発している。
フランス国民のNONの影響は、外為市場を通じてグローバルな過剰流動性を刺激し、実物資産への回帰現象を生むという、思わぬ波紋を呼んでいるようだ。