2005年6月1日
フランス国民がユーロ憲法を拒否したことは、外為市場にかなりのインパクトを与えている。ヘッジファンド勢は、おしなべてユーロを総売り、その結果としてドル買いに走っている。外為市場のレートは二国間の経済を天秤にかけた相対的評価で決まるのだが、今は、双子の赤字という構造的問題をかかえる米国経済よりも、ユーロ経済のほうが"より悪い=worse"との判断に大きく傾いている。金と円はその結果としてのドル買いの余波で、売られている。金と円への影響は玉突き現象みたいなもので、独自の要因による売りではない。しかし、グローバルなマネーの動きは有機的にリンクしているので、このような"余波"は避けがたい。
当面、ユーロ ペシミズム(悲観論)は尾を引くだろう。ユーロ創設後、最大の危機といっていい。
しかしながら、もう後戻りできないことも事実である。戦艦大和のように、巨大なユーロ丸は、そう簡単に方向を変えられるものではない。EUの更なる統一へのタイムテーブルは遅れが必至となったものの、"ゴー"のサインは変わらない。紆余曲折を経て、何らかの妥協が図られることになろう。欧州の歴史は不協和と妥協の繰り返しであった。
金への影響も、しばらくはドル買いによる売りプレッシャーが続くだろうが、金独自の要因ではないので、持続性は限定される。底は浅い。
今後、注意が必要なポイントは、ユーロ売り、ドル買いと人民元切り上げの相乗効果、或いは、相殺効果である。これは、マーケットの流れにより、どちらにも転び得るので、目が離せない展開である。