豊島逸夫の手帖

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反日、北朝鮮-アジアの中の日本

2005年5月26日

筆者は国際機関の極東部門に属し、同僚の多くは中国系である。また、日韓地域代表として韓国も統括している。そういう立場ゆえ、より強く感じるのかもしれないが、アジアと日本の関係は本当に心配である。

このままゆくと、10年後には、中国、北朝鮮、韓国というブロックと、日本、台湾、米国というブロックに二極化するのではないかとさえ思ったりする。 要は、中国はアジアの覇権争いのなかで日本が邪魔なのだ。一方、日本は悲しくなるほど狭い国内重視の島国根性から抜け切れないのだ。その間隙を衝いて北朝鮮はちょっかいを出し、台湾はそれを抜け目なく利用する。

ここで、アジアのバランス オブ パワーについてこれ以上議論する気はないが、問題は、これが日本人の個人投資家の資産運用にも否応なく影響を与えてくることだ。

個人が10年後、20年後の人生設計を考え、資産運用を考えるとき、日本がアジアの政治情勢のなかでどうなっても対応できるような備えを今から考えておく必要がある。

アジアがEUのような地域連合でまとまる可能性は低い。逆に地域紛争の可能性はある。

好むと好まざるに関わらず、日本はアジアのバランス オブ パワーに巻き込まれることを想定した資産計画とは、まず、円中心の発想から脱却すること。世界はドル、ユーロを軸として動いている。だから、アジアの情勢がどうなっても、比較的影響を受けにくい欧米の通貨に資産の一部をヘッジすべきだろう。

だからといって、今持て囃されているデートレーダーを気取って為替売買益を目指せと唱えているわけではない。戦略的ポジションを持てと言っているのだ。 更に、北朝鮮とか中国とか何をしでかすか分からない国々を相手にするわけだから、きな臭い状況にも対応できるように、金の戦略的ポジションも必要となろう。

このような長期的配慮がもはや杞憂とは言い切れないほどに、筆者の肌感覚では事態が悪化している。

13億人の中国人の半数以上が反日感情を抱き、北朝鮮は核をもてあそび、韓国も日本を敵視する状況のなかで、日本人の多くは未だに円だけにしがみついている。桜の如く散るのも皆一緒という日本独特の発想が未だに生きているのだろうか。

有事の金という言葉は従来、日本人にとってはピンと来ない響きがあった。しかし、中国の"近所のいじめっ子"のような所作とか、アパートの一室で火薬をもてあそぶような北朝鮮の行動を目の当たりにすると、いくら近所付き合いの苦手な国の住民とはいえ、火の粉を被っても生きてゆける自衛策くらいは考えておく必要があろう。

2005年