豊島逸夫の手帖

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売るべきか 売らざるべきか パート2

2005年12月1日

東京市場主導の500ドル達成については、ロンドン、NYともに至ってクールである。"東京が騒ぎ始めたら一相場終わりさ"と言わんばかりだ。(日本人投資家のインド株殺到現象について取り上げた先日のビジネスウイーク誌の見出しが、"日本人買いラッシュ!これで終わりか!"というものだったしね。)

欧米市場も中長期的には強気論が支配しているのだが、短期的には、そろそろクリスマス休暇がちらつている。機関投資家もディーラーも、今年は結構儲かった。もう無理することはない。ハッピーなクリスマスを迎えたい、というのが正直な心境なのだ。

11月末の感謝祭が終われば、いよいよジングルベルというときに、突然、東京が騒ぎ出した。どうなってるの?という欧米からのメールで筆者のボックスはいっぱい。ここまで書けば、欧米市場のクールな反応の背景が分かるでしょう。

さて、ここのところ、投資家からの質問の大半は、売るべきか売らざるべきか ということ。半年前、6月22日付け本欄に、同様の見出しで書いたので、まずはそれを読み返して欲しい。(→こちらへ)

ということで、今回は、そのパート2。

筆者の周りを見ても、6月以降、普通のサラリーマンの友人たちは、(保全目的で長期保有という建前で買ったものの)誘惑に耐え切れず、早々と売り払った一方で、年金の足しにとか、相続対策に買ったシニアの友人たちは泰然と構え、もっと買いたいのだが、何時が良いか、と聞いてくる。おカネを持ってるほうが結局勝つという相場の原則は崩れていないようだ。そういう豊島さんはどうなんだ、と聞かれるが、あちこちお付き合いで入った純金積立を義理堅く毎月粛々と払い続けている。全く売る気がないのは、筆者の友人のなかでも、特に、霞ヶ関、永田町の人種たちから、日本に於ける財政赤字インフレを真剣に憂え、老後に備えて個人的に金を買うひとたちである。

むしろ、筆者が売りたい誘惑にかられている(というか真剣に売りを考えている)のは、ドルとユーロの持ち高のほうかな。

さて、金を売るべきか、の質問に戻って、筆者の答えは、前回と変わらない。ただし、これからは、それほど派手には上がらないよ。前回は1600円の時で2000円目標、但し、3年後と書いた。それが半年もたたず現実になった。それほど、円安、海外金高の同時進行ペースの速さは、筆者の想定外であった。この円建て金価格上昇ペースが更に続くと期待してはいけない。

これからは、2000円が新たな需給均衡水準になるだろう。このまま、2500円に向かって突っ走るとは思えないが、1800円(或いは450-470ドル)にでも下がれば、世界中の投資家が金買いに走るだろう。オイルマネー(ロシアも含む)、アジアマネー(中国、インド)、年金マネー、そして、そのときこそジャパンマネーも。それほどに、金、そして、コモディティーを見る投資家の視線は熱い。

新たなマネーが大挙して流入しつつあるのに、供給サイドに増産の兆しは見えない。当然、市場の需給構造は大きく変わり、需給均衡価格は上昇する。短期的乱高下を繰り返しつつ収斂してゆく水準が500ドル、2000円だと思う。予想外のスピードでその価格水準に達してしまったので、短期的には要警戒である。来年は、その新水準を固める年になりそうだ。(はや来年の見通しを語る時期になってしまったね。近々書きます。それまでに、2004年12月17日付け本欄"2005年金価格展望"でも見て、実績の査定でもしてください。)

なお、筆者が本当に金の売りを薦めるときは、米国人が、過剰消費を控え、過小貯蓄を反省し、カウチポテトの生活を始め、同時に、中国が過剰貯蓄を止め、輸入消費に走るとき。(そうなれば、双子の赤字も根本的に解決されるから。)あるいは、海底金鉱脈を経済的に採掘する夢のハイテクが開発されたとき。南アで地下1000メートルの金採掘現場に入ると、グラム2000円でも安いと実感するのだ。

2005年