豊島逸夫の手帖

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ジムロジャース GS訴追について語る

2010年4月20日

Goldman could trigger market correction: Jim Rogers

ジムロジャースが語っている内容に共感を覚えたので紹介したい。
「SECのウオール街魔女狩りが加速すると、金を買うチャンスだ。2008年を思い出してごらん。AIG破たんやら、リーマンショックやら、商品市場でも、超ド級の強制手仕舞い売りが出たよね。でもその売りの大波は、市場のファンダメンタル悪化によるものではなく、売らざるを得なくなった連中が売りに走ったからだった。こういう時こそ、買いのチャンスさ。"

筆者が昨日本欄に書いた「結構な修羅場になったら、そこが買い場」と同じマーケット感覚なので、共感を覚えたのだ。

ただし、ポールソンのファンドについては、昨日本欄で「解約殺到すれば運用資産売却を強いられよう」と書いたが、その後、当チームのヘッジファンド担当と入念にチェックしたところ、3年間のlock-in period=3年間は顧客が解約できない仕組みであることが判明。このご時世では極めて珍しい設定だが、それだけポールソンのカリスマ性が強かったのだろう。解約ラッシュは起きにくい仕組みになっていた。

さて、マーケットのもうひとつの懸念材料である中国バブルについてのエピソードをひとつ。

WGC上海事務所に、新婚の青年が働いている。とてもいい奴で普段からメール交換する仲である。年齢は30歳前後。その彼の目下の悩みはマイホーム購入だ。

前から目を付けていた物件は、とっくに手が届かない水準にまで価格が上がってしまった。彼は明らかに不動産バブルだと感じて、当面他の物件を買う気はサラサラない。いわく「僕が独身時代5年間借りていたアパートがあるんだけど、そこの物件価格は倍になった。でも家賃は変わらないんだ。要は住む気が無い人たちが買ってるってことでしょ。

これまで貯めたマイホーム資金はある。前はそれを株で運用したりしたけど、今は銀行預金。ちょっと様子見。先々のこと考えると、子供も欲しいし、消費は極力切り詰めている。

「ところで、ジェフ、中国の不動産はいつ買い時だと思う?」
「そんなこと日本人の俺に聞いたってしょうがないだろう。」
「もちろん、日本人のジェフに中国の不動産価格の予測を聞いているんじゃないよ。こういうことなんだ。いま、僕の廻りの友人たちに中国の不動産について意見を聞くと、ほぼ全員が高値警戒感を抱いている。問題は、どこまで下がるかだ。早晩下げ止まると見る楽観論が4割くらい。もっとかなり下がると見る悲観論が6割。意見が分かれている。悩ましいんだ。こういう状況を聞いて、ジェフのマーケット感覚では、どう反応するか知りたい。」
「うーん。ずばり、もっと下がると見る悲観論が8割を超えたら、そろそろ真面目に物件の物色を始めたほうがいいね。おそらく、悲観論が9割以上になったところが相場の大底。でもセリングクライマックスというのは長く続かない。だから、その手前の時点から準備万端整えておいて、マーケットが修羅場の様相を呈してきたら、直ぐに買いに入ることだ。新婚夫婦のマイホームなんだから、一生の買い物でしょ。俺のいつもいう『Bird's eye=鳥の目』で見ることが大切さ。いま上海の不動産価格を吊り上げている連中は、所詮『虫の目』で買っているのだろうから。」
「ありがとう。僕も同じこと考えていたので、ジェフに確認してもらって自信がついたよ。謝謝!」

こんな会話の後、筆者が感じたこと。こういう中国では健全なマイホーム購入希望者が億人単位で存在するわけで、不動産バブル破たんの時を虎視眈々と狙っている。このバブルは仮にはじけても、V字型で急回復するだろう。

最後に、アイスランド火山噴火で欧州線ストップの話題。実は筆者は、ヒースロー空港の歴史に残る濃霧に出くわし72時間足止めくらった経験がある。ロンドン市内から車でヒースローに近づくにつれ、怪しげな暗雲のような濃霧が視界を覆い始めた。それでもフライトチェックインは続き、すでにボーディングしたところで、突如フライトキャンセルのアナウンス。その晩からまる3日間、今、成田空港内に立ち往生している外人旅行者と全く同じ状況に陥ったのだ。連日、早朝から、いつ再開するかもしれないということでスタンドバイ。待って、待って、待つこと、ついに72時間。空港近くのホテルと空港内をうろうろする生活であった。市内に戻ろうかとも思ったが、その間にもし再開すれば、搭乗手続きに出遅れる。ストレスも限界だったね。災難といえば災難だけど、つくづく同情します。合掌。

2010年