2010年9月1日
昨晩の欧米市場で金価格が1250ドル近くまで急伸。6月21日につけた史上最高値1266.50ドル(NY先物)に接近してきた。前回は打ち上げ花火で終わった高値だが、今回は調整を経てジワジワ下値を切り上げてきた後なので底堅さを感じさせる展開だ。
以下に6月28日(ロンドン後場で史上最高値をつけた日)と昨日との市場環境を比較してみた。
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6月28日 |
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8月31日 |
NYダウ |
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10,138 |
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10,014 |
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米国10年債 |
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3.03 |
% |
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2.47 |
% |
ドルユーロ |
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1.2284 |
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1.2682 |
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ドル円 |
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89.40 |
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84.16 |
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WTI原油 |
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78.25 |
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71.70 |
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SPDR金ETF |
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1,316 |
トン |
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1、302 |
トン |
NY先物買い越し残高 |
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742 |
トン |
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688 |
トン |
VIX |
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29.0 |
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26.5 |
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こうして見ると目につく違いは
―ドル長期金利が急低下。ディスインフレ・モード、
かつ相対的に安全性が高いと見られる米国債へのマネーシフト顕著。
―ドルが対ユーロでも対円でも軟化。
―原油価格は下落
さらに、マクロ経済環境にも、前回から今回までの間に大きな変化があった。FRBが明確に出口戦略(=利上げ)を棚上げして追加的量的緩和も含め超金融緩和継続の姿勢を明確にしたことだ。金利を生まない金には超低金利継続は強い追い風になる。
そして、経済成長率、雇用、住宅関連など米国主要経済指標が軒並み悪化したことが外為市場でドル売り傾向を刺激する結果となった。結局 ドルもユーロも(そして円高とはいえ円も)構造的アキレス腱を抱える状況が続き、主要通貨の弱さ比べ傾向が加速している。その中で、無国籍通貨=金が浮上する構図は変わらない。
NY株が、業績は回復してきたものの、リストラやコストカットによるバランスシートの改善に留まり、結局、軟調が続いていることも金には買い要因となっている。
その間、中国を中心とする新興国の金需要は健在で、とくに1200ドル割れの下値を買い支える役割を果たした。上海市場からのコメントに価格下落局面で「下方支援」と書かれていたことが印象に残る。
なお、金ETF残高は一時減少したが、ほどなく回復し増加基調に戻っている。長期保有主体なので大きな流れは変わらない。
NY金先物買い越し残高を見ると、まだ新規買いの余地が残っている。買い越し残高が800トンを超えても不思議ではない。
このように比較してみると、前回とはかなり景色が異なる。マクロ経済要因に支えられているので欧米の買いはまだ続きそうだ。しかし新興国の実需は1250ドル近くで買い控え傾向が顕著だ。いずれ高値慣れするであろうが、まだ時間がかかりそう。
先物、ETFの買い、現物リサイクル売りの構図だが、短期的には買いが優る。
今週末の米国labor day weekendを過ぎると欧米市場も一気に秋相場に突入する。今後の考えられる材料としては
―米国経済二番底懸念拡大、FOMCのより鮮明な緩和姿勢
―欧州経済不安再燃
―BRICsなどの中央銀行の金買い
―大手年金基金の金参入
―中国市場の規制緩和進展
―インドの需要回復
なお、株式低迷で機関投資家のポートフォリオが毀損しているのでリスク回避傾向は強く、株価急落とか経済危機の材料に対しては、運用資産総売りで対応する可能性も強い。短期的急落局面も考えられる。