豊島逸夫の手帖

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ユーロの実質切り下げで急場凌ぐ

2010年5月11日

90兆円相当の大盤振る舞いでユーロ防衛。不安感を払しょくして株や商品を買いたくてしょうがないマーケットは、あるいは買わせたくってしょうがない業界は、素直にこの大盤振る舞いに飛びついた。株も商品も急反騰。

でも、内心は、皆、冷めてみている。

これは輸血、あるいは輸血に備えた献血のようなもの。痛みを伴う手術(=緊縮経済政策)がこれから始まる。患者が果たして痛みに耐えられるか。とくにエンジョイ・ライフの南欧の国民が。

今回の大盤振る舞いを見るに、実際にEUが身銭を切るのは1割以下の7兆円程度。あとは連帯債務みたいにカネを借りてあげるという部分と実質日米頼みのIMFからの援助。

しかも連帯債務人になってあげるという国々が発行する借金証文(=国債)はECBが買い取ってユーロを対価として市中に供給するという。いわゆる量的緩和みたいなもの。

あのお堅いことで有名なECBも、さぞ怒り心頭に発していることは想像に難くない。放蕩息子ギリシアのせいで、「中央銀行の禁じ手」を発動する羽目になったのだから。

でも結果はユーロの大量発行供給で、その価値が希薄化するは必定。これって実質的なユーロ切り下げに等しい。ギリシアがユーロを導入せずに旧通貨ドラクマを使っていれば、即ドラクマ切り下げで凌いだことであろう。

しかし、ユーロに参加したことで、代わってユーロを実質切り下げざるを得なくなったということか。でも他のユーロ参加国、とくにドイツにしてみればユーロの価値が薄まることは耐えがたい。

欧州の南北格差問題の厳しい現実を感じる。

日本の地方格差は税制で都市部から地方への所得再配分で公平化を図る。同じ日本人だから同朋相身互いという精神も働く。しかし、主権も文化も言語も異なるEUとなると、ブリュッセル本部が税制で公平化は出来ない。今回の防衛策は、富めるEU国から、貧しいEU国への税制を通じない所得再配分措置でもある。

ユーロという共通通貨を導入してEUを結成し、南欧の国々も一時は盛り上がった。それまでは冬になるたびにリッチなドイツ人が避寒地としての南欧リゾートに大挙押し掛け、それを現地の南欧人は指をくわえて見ていた。

それが同じ経済圏、同じ通貨で団結するということで、これで自分たちもドイツ人並みの生活を享受できるという夢を見た。しかし、それにはカネがかかる。でも金融政策は各国共通なので勝手に金融緩和ができない。結局、自分たちの裁量で動かせる財政政策に依存症となり放漫財政を招いた。

そのツケが今回、ソブリンリスクとして一気に浮上したわけだ。

さて、ECBの国債買い取りが今後禍根を残しそう。FRBもECBもドル、ユーロをばら撒く。そのカネは生産部門より株式、商品市場などに廻りそう。過剰流動性相場が加速する。昨晩の欧州そしてNY株式急騰は、その第一幕かもしれない。

ウオール街では今、デカップリング論が盛ん。2009年バージョンは米中経済デカップリング(非連動)論であったが、2010年バージョンは米欧非連動説である。欧州の財政危機が大西洋を亘ってどこまで米国に影響が及ぶか。

米国経済自体のマクロ指標は好転している。今後、マーケットのテーマは欧州経済から米国経済に戻ってゆく兆しも見える。

さてマーケットだが、まずNY株は、ショートカバーラリーの面も強い。空売りの買い手仕舞いが殺到した感じ。でも前日比ダウ400アップが引けまで持続したので意外に強い。外為ではユーロ空売りポジション残高がシカゴ通貨先物市場で急増していることが気になる。 商品は、原油とプラチナがユーロ不安後退を素直に映して上昇。

金はもっと下がるかと思ったが最大20ドル下げで留まり、結局1200ドル近辺を維持。ドルもユーロも減価ということになれば、やっぱり金が買われるようだ。ただし、金に関しては、足元短期的にはまだ安心はできない。アジア中東の現物需要は1150ドル程度を値ごろ感と見ているようだ。筆者流の言い方を使えば、根雪と新雪の境界線。いずれにせよ、下値といっても限定的ではあるが。

ドル円は引き続き円安っぽい流れと魚の目で見る。

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温泉旅行も兼ね、参加ください (笑)

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2010年