豊島逸夫の手帖

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ユーロリスクと中国リスク

2010年1月21日

昨晩のNY商品市場は、ユーロ安=ドル高と中国金融引き締めの報道で急落。まず、ユーロ売りの原因は、本欄でも繰り返し取り上げてきたソブリン・リスク。ギリシア、アイルランドなどEU圏に国債格下げ、さらにはデフォルト(債務不履行)リスクが顕在化している。このトピックに関しては、ちょうど今日発売の日経マネー最新号の筆者コラム「From ワールド to ゴールド」でも論じている。国債デフォルトの可能性が高い順にトップ10の国リストも載せた。スペインについての懸念材料とか、ポンド売りの可能性についても触れた。全体のテーマはヘッジ・ファンドが見る2010年のリスクはどこにあるか、ということなので、ご一読いただきたい。

足元の外為市場の弱さ比べの順を不等式で表すとこうなる。
ユーロ < 円 < ドル

円とドルは拮抗しているが、ユーロに対する悲観論(ユーロ・ペシミズム)が突出している。このユーロ売りで、結果的にドルが浮上してきて、ドル高。これは商品の売り材料。

そして中国リスク。これも本欄、そして日経マネー先月号コラムで詳述したことである。昨日、新規材料として出たのは、中国当局の行政指導で新規融資が抑制されつつあること。大手商業銀行の支店レベルでは融資許可が下りなくなった(本店の許可が必要)とか、行内の電子融資認可システムが遮断されて使えなくなったとかいう例が見られるようだ。しかし、北京の党本部は、景気回復の腰を折り失業が増え人心が乱れることを最も嫌う。貸出にブレーキをかけても、やや減速させる程度で、急ブレーキは踏めない。商品市場への影響としては、過熱した「熱銭」を冷ます程度に止まろう。

2010年