豊島逸夫の手帖

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最新IMF統計―インド公的金保有11位に浮上

2010年1月15日

四半期ごとに発表される公的金保有ランキング(IMF統計)。この一年で注目される順位の変動が確認された。(単位:トン)

2008年12月31日 2009年12月31日
  米国 8,134   米国 8,134 
 ドイツ 3,412   ドイツ 3,407 
 IMF 3,217   IMF 3,005 
 フランス 2,509   イタリア 2,451 
 イタリア 2,452   フランス 2,435 
 スイス 1,040   中国 1,054 
 日本 765   スイス 1,040 
 オランダ 621   日本 765 
 中国 600   オランダ 612 
10   ECB 534  10   ロシア 607 
11   ロシア 496  11   インド 557 
12   台湾 422  12   ECB 501 
13   ポルトガル 383  13   台湾 423 
14   インド 358  14   ポルトガル 382 
15   ベネズエラ 356  15   ベネズエラ 356 
16   英国 310  16   英国 310 

あらためて中国、インド、ロシアが順位を上げていることが確認された。この最新統計で インドが200トン増えた。一方でIMFは200トン強減った。ロシアは600トンの大台に乗せた。BRICs(ブラジルは除く)が、ここでも躍進している。

筆者の注目はIMFが403トンの金売却を発表して、今回200トン強のIMF金保有が減少。それでは、残りの200トン弱は、どの国が買うのかな。インド説が有力。10月にインドがIMFから購入したときの平均価格が1045ドルと言われる。やはり1100ドル割れを待っているのかな。ヒョッとしたら、今月の1100ドル割れのとき、すでに再購入を開始したかもしれない。まぁ、これは筆者の勝手な想像だから、その程度に聞いておいて欲しい話だけど。

そもそもインドが公的金準備増強にこだわるのは、金の有難味を思い知らされた苦い経験があるから。話は1990年に遡る。その年、インドは経済危機に見舞われた。1980年代の放漫財政、国際収支悪化、湾岸戦争による原油輸入価格の急騰、輸出減少などが相次ぎ、外資は相次ぎ引き揚げ。ついにはインドの外貨準備は輸入支払いの2週間分しか賄えないほどに底をついた。そこでIMFの緊急融資を受けることになるのだが、その条件として、担保として公的保有金をロンドンに搬送せざるを得なかったのである。

まぁ、この経済危機をきっかけに、インドは他の発展途上国に先んじて経済規制自由化を1990年代前半に相次いで実行し、立ち直ることになる。その規制緩和の目玉は金輸出入、国内取引の自由化であった。金の有難味を思い知らされたインド政府は、民間の金ストック増強を図ったのである。その結果、インドの民間金需要は200トンから一時は800トン近くまで急増し、断トツの金需要世界第一位の国になったのであった。(昨年は、インドに遅れること18年ながら、ようやく金解禁に踏み切った中国にアッサリ一位の座を明け渡すことにはなったが...。)

そしてロシアも金の有難味を思い知らされた国である。1990年代初頭に旧ソ連は金の大量売却を繰り返し、モスクワの金庫にあった2500トンの金が500トンにまで減ってしまった。その当時は、「トイレットペーパーの輸入資金を調達するために金を売却」などと報道されたものだ。そのような苦い経験を経たからこそ、今や原油価格上昇で潤ってきた国庫の中で金準備を再増強しようと考えるのは、至極当然の事に思える。

インドもロシアも有事に金が頼りになることを経験した国。有事の金は、買いではなく、売って(あるいは担保として活用して)急場を凌ぐ、というのが本筋なのだ。

2010年