2010年11月19日
昨晩は米国債売り、株買い、商品買いの展開に。米国10年債の利回りは、ついに2.93%まで急上昇。QE2(量的緩和第二弾)が発動されれば2%以下に下がると債券市場では言われていたのに。(それがQE2の目的だったし。)
ところがマーケットはQE2の効果について明確に不信任投票を投じていることになる。QE2が実行されればされるほど通貨供給が増えてインフレ懸念が生じ、インフレに弱い国債は投資家により売られてしまうというジレンマ。マネーフローから見ると、GMのIPO(新規株式公開)の好調な滑り出しを見て資産効果が働いたことで、債券から株へのシフトが顕著だ。米国債売ってGMに乗り換えか?
貴金属価格に関しては、中国引き締めの材料も、結局は、投機買いポジションのドカ雪を除雪するために使われた感じ。今日放映のCNBC金特番の一コマを思い出した。
キャスター「今回の下げには単なる調整というより潮目の変化も感じられますが」
豊島「単なる調整です(笑)」
(なお、このCNBCの番組広告が今朝の日経朝刊国際面に出ています。)
欧州財政危機については、アイルランドがEU救済を受け入れの報で危機感後退。アイルランド政府としては、EU/IMF共同経営の質屋さんに駆け込むところを見られたら、皆に何を言われるか分からないから、敷居を跨ぐことに躊躇していた。しかし、ついに、そうも言って居られなくなったようだ。でも、マーケットには、その決心が安心感を生む。
とはいえ最大の問題はソブリン・リスクの大元になっている銀行不安リスク。それが欧州銀行群に飛び火する可能性だ。アイルランド政府が自国のゾンビ・バンクを見放すことができず、あくまで救済にこだわると問題の先送りとなり再燃は必至。
さらにプロの目からはスペインと米国地方債(muni)バブルが懸念されている。今朝、詳細に語る時間がないが、スペインは一時反省して真面目に緊縮改革案を提示したことが、「殊勝である」と評価され、「御沙汰無し」「保釈」となっていた。しかし景気回復策のための財政赤字の規模が、身の丈以上に大き過ぎることが不安視され始めている。国の規模からして、アイルランドの比ではない。
そしてmuniだが、その市場規模は2兆8千億ドル。そのうち1兆ドルが個人投資家によって保有されている(muniといえば安全資産の代表格だった)。そこに地方財政破綻の危機が迫ると、パニック売りが起こるのではないかという不安である。
年末までまだ40日間ある。激動するマーケットにとって、40日は長―い。ひと波乱も、ふた波乱もありそうである。シートベルト・サインは消えましたが、引き続き、お客様の安全のためにシートベルトは低くきつめにお締めくださいませ。
さて、週末は福岡で読売新聞主催セミナー。九州縦断シリーズの最終幕。CNBC公開収録後に、筆者が参加者席に降りていって歓談したことが楽しかったので、今回の福岡でも、ひと通り終わったあとで、居残り組と和やかに語りましょうという趣向を急遽追加しました。
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そして翌日からロンドン出張、中国出張と続くので、ブログ更新も間隔が開くかもしれません。まぁ、その代わりと言っちゃなんですが、みやげ話は、いずれタップリと(笑)。