豊島逸夫の手帖

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株売り 債券買い の流れ

2010年8月24日

NY市場における足元のマネーフローを見ると、8月5日―11日の1週間の資金流出入はこうなる。
―債券ファンド プラス 71億ドル
―株式ファンド マイナス20億ドル
債券買い、株売り、という絵に描いたようなデフレの兆候である。否、デフレを予期するマーケットの兆候と言えようか。

連日、市場では、double dip=二番底の可能性が議論される。今日発表の7月中古住宅販売統計も事前予測では悪化している模様。(今回はとくに住宅減税措置という点滴が6月末で本格的に外された後の動向を計る上で重要視されている。)

しかし、米国10年債の利回りが2.5%台まで下がってくるまで米国債が買い込まれると、さすがに市場でも「債券バブル」bond bubbleの可能性が議論されるようになった。

バブルであれば、誰かが売り攻勢に走ると、皆が一斉に出口へ殺到するいわゆる「劇場のシンドローム」が起こるはず。しかし、今回の債券買いラッシュは様相が違うよ、と言われる。

出口へ殺到するキッカケは、債券の天敵である「インフレ」懸念が生じる時だが、その気配は目下感じられない。ベビーブーマーのマネーが、運用難の中で「安全資産」の国債買いを加速させている。

そうはいっても、市場関係者のほぼ全員が「今回は違うぜ」と言い出すという現象も気持ち良いものではないね。

さて、金市場でも、そのデフレが今のマーケットのテーマ。デフレは、コモディティーとしての金には売り材料だが、マネーとしての金には買い材料になる。近年、コモディティーとしての面が薄れ、マネーとしての顔が強くなっている金ゆえ、今回はデフレで買われている。
原油↓ 金↑ と、対照的な値動きにもなっている。

今週、来週も住宅雇用関連の米国経済重要指標発表が続くので、デフレというマクロ経済要因に支えられる金価格の構図が続きそうだ。

2010年