2010年3月3日
WSJ(ウオールストリートジャーナル)が、Hedge funds pound Euro=ヘッジファンドがユーロに総攻撃という、かなりセンセーショナルな見出しの記事を掲載したことがウオール街の話題になっている。
ヘッジファンド御用達のブローカーが主催したパークアベニューのレストランでの会食に、ソロスなどの有力ヘッジファンドが参加。そこでユーロ空売りについて話し合われたとの報道。これが市場操作疑惑を呼んだ。米司法省も重大な関心を寄せ、当該ユーロ取引に関する社内書類を廃棄しないように書面で指示、と、その書面を受け取った関係者の話もある。
さらに、ギリシア財政不安に乗じてヘッジファンドがCDSを通じ巨額の利益を得たとの批判(本欄2月26日付けに詳説)もある。ギリシア危機を囃し、ユーロへの不安感を煽り、ユーロ空売りして儲けた、ということになる。
しかし、外為市場でドルユーロの取引は最も売買高が多く、一日1兆ドルを超える豊富な流動性がある。現場の感覚として、ユーロの価格操作など出来るはずもない。筆者には、どうも一連のヘッジファンド叩きに乗ったような記事に見える。WSJまでが陰謀説を流すようになったのかね。
ただし2月10日付け本欄で述べたように、ユーロに記録的な投機的売り浴びせがあったことは事実。
しかし、足元の外為市場では、売りの矛先がユーロからポンドに移っている。というと、日経マネーの筆者連載コラムを読んでいる人は、ピンとくると思う。先月号でヘッジファンドの次の標的はポンドと書いた。あの直後から、ポンド売りの波はジワジワ拡大していた。今朝の日経朝刊マーケット総合面には、「ユーロの次はポンド安。財政不安で売り目立つ」という見出しの記事あり。シカゴマーカンタイル取引所(CME)の通貨先物取引では、投機筋による対ドルでのポンド売り越し額が39億ポンドと約4か月ぶり高水準に拡大と報じている。
今や、ソブリンリスクの循環物色の感あり。
さて、金価格は、ギリシア緊縮政策導入の報道でマーケットのリスク許容度が戻り、ふたたび買い直されて急騰。と後講釈されている。しかし、リスク許容度が高まるとリスク資産としての金が買われるという見方と、リスク許容度が高まると安全資産としての金への逃避は終息する、という見方がある。マーケットが買いたければ前者の説が流れ、売りたければ後者の説が流れる。
まぁ、足元の流れを見るに、IMF金売却報道で売りに傾いていた市場に、中国が残りのIMF金を購入というガセネタが流れ(あるいは流され)、意表をつかれた形で金価格が反発した。全く根拠のない噂であったが、短期的な市場の流れを変えるキッカケになったことは事実。このあたりが、相場は理屈ではなく、生き物である、と言われる所以か。