2010年8月11日
7月22日の首題原稿の続編。昨晩のFOMCで、いよいよバーナンキ船長が舵を取る豪華客船(量的緩和2世号)の碇が上がった。出港準備万全という宣言である。(QEとはquantitative easing の略語にかけたもの)。
FOMC声明文の内容は、まさに「出口戦略は棚上げ。当面、量的緩和パート2出動の態勢が整った」というメッセージ。具体的方策として、FRBがこれまでに買い取った米国債、MBS(住宅ローン担保債券)の中で今後満期償還されるものについて、その償還金を今度は米国債買い取りに再投資するという。(これまでは買い取った債券が満期償還されたら、保有債券残高は、その分、自然減とする方針と理解されていた。これ即ち、有事対応から平時対応への以降=出口戦略であった)。従って、昨晩の声明は出口戦略延期宣言とも言える。
下記をクリックしてグラフをご覧いただきたい↓
http://research.stlouisfed.org/fred2/series/BASENS
債券買い取りで2兆ドルにまで膨張したFRBのバランスシート。これを出口戦略で徐々に減らすはずであった。しかし昨晩のFOMC声明では、この2兆ドルという残高を減らさず、同水準を維持するということを明言したのだ。しかもMBSは減らし、国債買い取りを増やすということは、マネーじゃぶじゃぶ作戦継続を意味する。さらに今後、米国マクロ経済データが悪化すれば、2兆ドルという残高を増やすことも辞さず、即ち、同作戦拡大の含みも残したことになる。ゆえにQE2号、船出近し、というマーケットの受け止め方になったわけだ。7月22日の首題パート1の原稿執筆時には、QE2号の姿が見えないのでマーケットが落胆したことと対照的である。
今後は、2兆ドルというFRBバランスシート残高が金融政策の新たなベンチマークになりそう。これが1兆8千万ドルになれば、新規債券買い取り停止=金融引き締め(出口戦略発動)。2兆2千万ドルになれば、債券買い取り拡大=更なる金融緩和となるわけだ。
しかし、鳥の目で見れば、金融政策は景気浮揚に無力だね。マネーじゃぶじゃぶにしたところで、企業の資金需要が停滞したままでは効果薄だ。MBS買い取って住宅ローン金利下げたところで、不動産市場が低迷を続け、雇用不安でマイホーム購入もままならぬ現状では、住宅購入が増えるとも思えぬ。まさに、liquidity trap=流動性の罠に陥った経済の現状なのだ。
FOMCの米国経済成長見通しもdowngrade=格下げされた。
さて、マーケットはFOMC声明前後で株高、債券高、ドル安、円高、金高に振れた。
NYダウは、マイナス120からマイナス30へ下げ幅縮小。
米国10年債の利回りは、2.81%から2.77%へ。債券相場は急騰。
ドルユーロは、1.31から1.32へ、ドル安。
ドル円は、85.80から85.30へ、円高進行。
金は、1197ドルから1206ドルへ反騰。
金については、先週末の雇用統計悪化=ドル安で買われ1200ドル台を回復したものの、その後の買いが続かず、再び1200ドルを割り込んでいた。それがFOMCで1200ドルを再度回復。まさにマクロ経済要因が金価格を支えている構図だ。
今後の相場のテーマは、デフレの進行度合い、ということになりそう。まだデフレとは言い難いが、今後の展開に注目ということだ。利上げどころか金融緩和の程度を計る相場となった。