豊島逸夫の手帖

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ユーロ建て金価格 過去最高値 更新

2010年4月7日

円安、海外金高で円建て金価格が最高水準に達したが、欧州ではユーロ安、ロンドン金高でユーロ建て金価格も過去最高水準を記録。ユーロ安、円安、ドル高となれば、セオリーではドル建て金価格は下落するはず。ところが、これが下がらない。結局、円建て、ユーロ建、ドル建て、どれを取ってみても金価格が上昇しているという現象。この事実が意味することは深い。

金の世界から見れば、三極通貨全てにマーケットが不信任投票を投じたということだ。FX的に言えば、ドルもユーロも円も構造的なアキレス腱をかかえる。要は、買いたい通貨がない。全ての通貨を売りたい気持ちだ。そこに金が浮上する市場環境を見る。無国籍通貨=金は、ソブリンリスクがゼロである。この状況をキーワードで示せば「通貨不信」ということになろうか。

もうひとつの主要通貨をお忘れではありませんか、という声も聞こえてきそう。そう、人民元である。でも、この通貨は、管理され、実質ドルにペッグされている。現状ではFXのメニューに定番商品としては入っていない。ただし、将来的に人民元が完全自由化された暁には、人民元と金が、米ドル売りエネルギーの受け皿となろう。

なお、人民元は常に政治有事リスクを孕むので、たとえ為替管理が取れても 長く持つきにはなれない通貨となろう。一朝、北京の体制が変われば、人民元という名称さえ消え、新たな通貨が導入されるというような事態でさえ、絵空事と切り捨てられない面があるのだ。そういう時にこそ、無国籍通貨がその存在価値を発揮するであろう。

以上、今朝は金の世界から見た、通貨の世界の景色でした。

今日の話は、金と通貨の比価についての議論と言えるが、コモディティーの世界では金銀比価とか金プラチナ値差などがベンチマークとして人気がある。でも、これは、あくまでコモディティーという狭いマーケット内での比価。金の金融商品化が加速しつつある今、時代遅れの発想である。金と通貨の比価こそが、今の金価格を読み解く鍵だと思う。生粋のコモディティー系の人は、金銀レシオに惹かれる。

筆者は、スイス銀行の「外国為替貴金属部」のトレーディングルームで育った。ドル、ポンド、円などのデスクの隣に金のデスクがあった。金をひとつの通貨として売買してきた。金の業界には、コモディティー系とカレンシー(通貨)系の二種類の人種が住みついているのである。

2010年