豊島逸夫の手帖

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バーナンキを信じられれば金は売り

2010年9月24日

今日の見出しは、新著「金に何が起きているのか」36ページに書いたことだ。今週に入り国際金価格が連日史上最高値を更新している事実は、マーケットがバーナンキを信じられなくなったことを示唆している。

今回の急騰劇は8月と9月の2回にわたるFOMCの声明文によって演出されてといっても過言ではない。
8月には出口戦略棚上げ。追加的国債購入の方針決定。
9月には声明がさらに踏み込み追加的金融緩和を明記。
やはり下馬評どおり、ヘリコプターベンの本性を表したとも言える。
(虚しいことは、いくらマネーをじゃぶじゃぶにしても、経済が流動性の罠に陥っているから、金融政策が無力になっていることなのだが...。)

今回の金高騰は、コモディティーとしてみれば、とても正当化できる水準ではない。新興国の現物需要は高値警戒強く買い控え傾向顕著である。カレンシー(通貨)あるいはマネーとしての金が主役となっている。通貨安競争の中で希薄化する主要国の通貨価値に対し、勝手に刷れない金という発行体の無い通貨が選択されている。このことは本欄でも繰り返し指摘したことであるが。

通貨価値に対する疑念という根深い問題ゆえ、調整が入っても、さらに上値を追うことになろう。金を買って売って儲ける投資というような次元の話ではない。投資家が通貨の原点である金に回帰しつつあるという深層の潮流が、「底流」から「増水」して顕在化してきた。

本欄では、今回の上げはマクロ経済の構造要因に根差し、単なるファンドの買いなどではないことを繰り返し述べてきた。だから、通常は新高値更新の度に釘刺し宣言してきた筆者だが、今回はここまで釘刺しは控えてきた。円高進行という特殊要因も釘刺しを延ばす要因の一つであった。

しかし、さすがにここまで来ると、NY金先物買い残高急膨張もあり、釘刺しを始めようと思う。しかし底は浅い。軽い釘刺しである。通貨の世界で金に原点回帰するという現象は、先物売り手仕舞いというような一過性の要因とは比べ物にならない重い流れであるから。

さーて、今夜の日経マネーナイト。その時間帯にも欧米市場で1300ドル突破となりかねないような巡り合わせ。その時には、まずは大台突破記念、お祝いのくす玉を用意して それを「釘刺して」割りましょうか。

2010年