豊島逸夫の手帖

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FOMC、中間選挙直前のおさらい

2010年11月2日

(「米国中間選挙でどうなる」10月27日付け原稿の再掲載)
共和党が下院を取り、民主党が上院はかろうじて守るシナリオが最も現実的。下院共和党は直ちに、
1)オバマの医療改革の撤廃
2)ファニーメイ、フレディーマックの二大住宅供給公社の実質国有化を停止
3)公務員新規雇用凍結、に動く。

しかし上院民主党はこれを拒否。ここにGridlock=国会審議の停滞が生じる。そうなると妥協可能なことは、財政逼迫による主要公共サービス窓口閉鎖を避けるための緊急法案程度。今年末に期限が切れるブッシュ減税措置も妥協が成立可能な分野。

ただし、民主党は減税継続対象者を年収20万ドル以下に限定する案。対して共和党は全ての年収制限は設けない。Gridlockゆえに、財政立て直しの議論も後退しそう。

さて、このような状況でマーケットはどう反応するか。政治的不安定の中で、米国財政赤字の問題は先送りになる可能性が強く、従ってドル不安は続くであろう。ただし、直ぐに消化することは難しい大きな材料なので、マーケットにただちに影響を与えることはなさそう。FOMCや雇用統計の方が、より直接的に効くであろう。


(そして、FOMCに関しては、10月5日付け原稿から)
貴金属相場に関する問題は、次回FOMC後のシナリオだ。そこで予想通り、大規模QE2が発動されれば、材料出尽くしで一転売られる可能性がある。「噂で買って、ニュースで売る」の展開である。もし、QE2が発動されなければ、失望売り手仕舞いということになる。どちらに転んでも金、銀、プラチナが同時に売り。

まぁ、QE2を先取りして上がってきた相場なれば、当然の結果とも言える。そこで次の問題は、下げがどこまで続くか。

これはQE2が果たして金融政策として、景気浮揚に効果を発揮するか否かにかかっている。現在のマクロ経済状況は「流動性の罠」に陥り、いくらカネをばら撒いても、それで景気が良くなるわけではないことは周知の事実。

銀行の貸し渋り。企業の資金需要減少。金融政策が即、効果を発揮する地合いではない。

一方で、「雇用なき成長」では失業は減らず消費は盛り上がらない。そこで二番底の可能性さえ囁かれる。そうなると景気敏感メタル価格は、過剰流動性相場が剥落し、実需減による景況感悪化で売りが加速することになろう。他方、金は、デフレが進行すると、破たんリスク、信用リスクが高まることで逆に買われる。

もちろん雇用統計など米国経済指標に改善傾向が顕著となれば、景気敏感メタルは買い直されることになるのだが。


(ところが、10月28日付け原稿では)
現在の展開は、FOMCを待たずにQE2(金融緩和第二弾)を先取りして、めいっぱい織り込み、材料出尽くし感が早くも漂う中で手仕舞い売りが出始めた。雇用統計、FOMC、中間選挙と波乱含みの材料が目白押しゆえ、今のうちに利益を確定しておき、しばらく様子を見ようという流れである。最近のマーケットは、プロの読みを更に先取りして、先手先手に動くようだ。こうなると 今度は FOMCをキッカケに新規買いが入り易くなる地合いになり得る。


そして、昨晩のNYでは、FOMCの第二次量的緩和近しの報道が飛び交う中で、「ニュースで売る」現象がNY株式市場では顕著であった。寄り付きこそ、ISM指標好転を囃して125ドル急騰したが、尻すぼみ。金も欧州時間で1365ドルまで上げたが、結局1350ドル近くまで反落して、尻すぼみ。これから最後の決め手は、量的緩和の規模だね。これは出てのお楽しみ(笑)。

さて、肝心の明日が、日本は休日。ということで、マーケットの激動に対しては、ツイッターで対応します。(こういうときに威力を発揮するね。)

なお、本日の日経朝刊 経済2の面に、新興国中銀が金の保有拡大という記事が出ています。

2010年