2010年2月24日
沖縄が中国に近く戦略的な要(かなめ)に位置するということは、軍事上ばかりではなく原油の中継供給基地としても重要ということになる。そこに目を付けたのがサウジ。その背景には複雑な地政学的要因が絡み合っている。
まず、米国は原油輸入面での中東依存を軽減するために、カナダ、アンゴラ、ナイジェリア、ブラジルなどに供給源を多様化している。そこでサウジは米国に代わる安定的原油需要国として中国に焦点を当てているわけだ。
2009年の象徴的出来事は、統計的に見て、サウジの対米原油輸出量が日量100万バレルを割り込み、対して、サウジの中国への原油輸出量が同12月には初めて日量100万バレルを上回ったことだ。この逆転現象に対する反応だが、じつは、米国は歓迎している。そこにはイラン問題が絡む。中国が対イラン制裁に(ロシアまで同調してきたのに)、いまだに二の足を踏むのは、イランからの原油供給への依存度が高いからだ。そこで中国がサウジに原油供給源を分散することは、イラン問題に関して中国の態度を変化させるキッカケになりうる。
さらに米国はイラク原油生産能力の回復に熱心である。老朽化した設備や社会インフラの強化に意を注いでいる。ここでは中国と利害が一致するので、米中共同路線でイラク復興に臨む。ただし、そもそもオペック設立時の提唱者であったイラクの原油生産が回復すると、イランのみならずサウジの原油覇権にとっても脅威となりうる。事実、イラクが掲げる「7年後に現在の日量250万バレルから1200万バレル」という目標数値が達成されれば、サウジの生産量を3割も上回ることになるのだ。サウジの心中も穏やかならぬものがあろう。
なお、イラクの原油生産復興計画には、世界の原油メジャーが参加の様相だ。BP、ロイヤルダッチシェル、エクソンモービル、ロシアのルクオイル、そして中国の国営原油企業などの名前がイラクのパートナーとして並ぶ。イラクもしたたかで、各社の取り分は1バレル当たり、僅か2ドル。あとの95%はイラク政府がいただくという条件である。まぁ、イラクにとって原油輸出収入は国の存在を支える生命線。国内では、部族間で、その分配を巡って対立が絶えない。
そして、隣国イランもイラク原油生産復興の動きに苛立ちを隠せない。国際的にイラン原油に対する依存度が減れば、原油を武器に外交を展開してきたイランにとって孤立化をますます深める要因となり、まさに死活問題である。彼らの苛立ちが象徴的に表れた事件として、昨年12月にイラン軍兵士がイラク側国境近くの原油生産基地を越境襲撃。一時的に占拠するというイザコザがあった。
そのイランの外交的弱点を突くかのように、ヒラリークリントン国務長官は、今週、中東を訪問中。イラン抜きでも中国に対する原油供給が支障なく継続されるべく、外交的なダメ押しを試みているようだ。
このような外交の国際舞台での動きを見るにつけ、沖縄が基地依存経済から脱却するためには、その地政学的優位性を生かして、対中国の資源供給中継基地としての存在感を高めることをさらに考慮すべきと感じる。