豊島逸夫の手帖

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金価格下げシナリオ

2010年6月9日

史上最高値更新を続ける金価格に死角はないのか。魚の目で検証してみたい。考えられる下げシナリオを挙げてみる。

◎来年にずれこみそうだが、いずれゼロ金利も解除される。いつまでも金利がゼロなどという異常な状態が続くはずもない。そこで金利を生まない金が売られる。

◎昨年までの常識でいえば、ドル高に転じると金安のはずだった。しかし、今年に入って対ユーロでドル高が続いているのに金も上がっている。ユーロ不安という買い材料が勝っているためだ。「悪いドル高」とでも言えようか。これが米経済本格回復による「良いドル高」になれば、金が売られよう。

◎中国経済のバブルが破たんして経済が減速する。中国の金需要も減少して、金価格の足を引っ張る。

◎NY先物買い越し残高が、引き続き700トンを超える過去最高水準の圏内にある。いずれ売り手仕舞いは必至。

◎ポールソンやソロスが金ETFを買っているが、これまでのヘッジファンドによる金保有に比し、かなり戦略的に腰据えて買ってきている。それでも、いつかは、彼らも金を売るときが来る。FOMC声明に利上げのニュアンスが盛り込まれるときなどが、そのキッカケになりうる。

◎米国CFTCによる商品先物取引規制の網に金も引っ掛かることになると、機関投資家は嫌気して売りに廻る可能性がある。

◎欧州財政不安が、今でこそ、信用リスクを高めることで、誰の債務でもない金の買い材料になっている。しかし、マクロ経済にデフレ懸念が顕在化すれば、金の宝飾、工業用需要が減少する。今年に入って世界的に実需は回復傾向なのだが、二番底ともなれば再び失速するだろう。

以上、市場最高値更新の時だからこそ冷静に見極める時と思い、今朝は売り材料を列記した次第。これ読んで、浮足立った人たちは、落ち着くかな。

2010年