豊島逸夫の手帖

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QE2(量的緩和第二弾)=リスク選好→中国利上げ、アイルランド財政危機=リスク回避

2010年11月15日

先週金曜のNY市場は「ニュースで売る」を絵に描いたような展開。QE2のトークで過剰流動性相場と囃され、株も商品も買い上げられてきたわけだが、金曜に追加的量的緩和の第一弾となる国債買い入れが実施された途端に、一転、総売りに。株、商品のみならず、肝心の米国債まで売られ、10年債の利回りが2.78%まで急上昇。QE2は長期国債を買い上げて、ドルの長期金利を下げるはずだったのに。マーケットは量的緩和政策が「流動性の罠」の中で無力と読み切っている。結果的には、QE2トークで買われ、QE2実施で売られるかたちになった。マーケット全体の雰囲気も、QE2で盛り上がり、投資家のリスク許容度が高まりリスク資産が買われてきたが、中国利上げ観測とアイルランド財政危機で一遍にリスク回避モードに転換。以上が虫の目で見た足元のマーケット。

魚の目で見れば、ここまでQE2期待感だけで株も商品も買い上げられてきたので、来るべき調整売り局面到来。健全な調整局面とも言える。中国利上げ観測があっても、中国経済の成長路線が急停止することはない。インフレ過熱懸念を冷やす程度の話だ。冷やし過ぎによるバブル崩壊を危惧する声もあるが、そうなれば一転、金融のバルブを緩めるのが中国の常套手段。かなり荒っぽいので慣性の法則でオーバーシュート、アンダーシュートしがちだが、結果はなんとか許容範囲内にまとめてしまう。多少のやり過ぎは全体の成長エネルギーが掻き消してしまうところが、停滞経済の日本から見れば、なんとも羨ましい限り。

そもそも中国を外から見ている人たちは「引き締め=商品売り」という定型的な連想で動くが、中国国内の庶民は毎日買い物するたびに物価が上がっていることを痛感している。だから肌の感覚としてインフレに備える必要も感じている。そこでインフレヘッジとして金を買っているわけだ。マーケットのトレンドを作るのは、紆余曲折はあっても、最後にはマスの動きである。今回の中国の材料は、利益確定のタイミングを見計らっていたファンドに売り手仕舞いの絶好の口実に使われた感もあり。

対して、アルランドの問題は深刻だ。四面楚歌。泣きっ面に蜂の展開になってきた。虫の目で見ると、こういう事が起きている。アイルランドの銀行がアイルランド国債を担保に市場で資金調達する際に、証拠金を15%割増と通告されたのだ。LCH Clearnetという清算機構の措置である。その追い証を払うために手持ちの国債を売らねばならぬという、なんともトホホのリスクの連鎖現象。

魚の目で見ると、アイルランドがEUに救済を求め駆け込めば、そこには怖―いメルケルおばさまが、どんと控えている。ドイツ国民の懐ばかりアテにされても困る。痛みは国債保有者も分かち合うべきだ。国債保有者にもヘアーカット=償還金額の大幅減額を飲んでもらうことが新たな条件になってきた。このドイツの提案で国債市場は益々冷え込む。アイルランドを巡るマーケットのセンチメントの変遷は、本欄で最初にこの問題を扱った2009年12月15日付「アイルランドの教訓」、その続編の2010年8月27日付「アイルランドの教訓 パート2」を参照されたい。

以上の市場環境の中で、貴金属価格はどうなるか。金に関しては、中国利上げ観測が消化され、欧州の信用リスク急上昇という展開で、調整局面から再び新高値を更新する流れに戻ると見る。対して、景気敏感メタルの銀プラチナに関しては、アイルランドの問題が緊縮モード加速=景況感悪化となると、かなり変動の激しい相場になりそう。なんせ流動性の限定されたマーケットゆえ、投機マネーの出たり入ったりに翻弄される展開が続くだろう。

さて、週末は名古屋で中日新聞ゴールドセミナー。ホールが埋まるほどの盛況でした。名古屋開催としては間違いなく過去最大の動員。それも中日新聞の読者で初心者が多かった。(ブロクで告知したときには既に〆切りになっていたし。)

ユニークな質問も。「地金の表面の刻印はへっこんでいるが、刻印が大きいと、そのぶん重量も少ないのか?」正直、まったく想像もしないような質問でした。でもこれが初心者の感覚なんですね。謙虚に受け止めねば。以前、株式セミナーで、金のPERはいくら、と聞かれたときも、ひっくり返ったけど。

なお、今回、Jeff's seminar indexがついに崩れました!ということは、これまでセミナーとなると史上最高値更新=市場過熱という廻り合わせで釘刺しコメントで弱気論を連発してきたジェフが、ひっさしぶりにブルなトーンで話したわけであります(笑)。

それからツイッターで呟いた岐阜 中津川 川上屋の「栗きんとん」「ささめささ栗」、そして伊勢の虎屋の元祖「生ういろう(栗バージョン)」等々、差し入れありがとうございました。待ち切れず、帰りの新幹線車内で食べ始めました(笑)。

なお、全く関係ありませんが、ツイッタ―で賑わった話題をひとつ。先日、筆者がアラサ―女性たちと会食した際の話。

彼女達の結婚願望はレンジ内で周期的に変動する。結婚相手の銘柄選択としてはジャスダック系が望ましい。若く将来的に大化けの可能性を秘める。この筆者の呟きに対して、「レンジ放れしたところを高値掴みするのが男である」という座布団3枚の秀逸な呟き返しも。

ちなみに筆者のニックネームJeffは、中国語で謝夫と書かれます。感謝と謝罪の夫なのですよ、私は。

2010年