2010年5月21日
昨晩は、なんというマーケットであったか。各市場の動きが共鳴共振しあって、ベクトルがバラバラバラバラ。(なんか書き方までtwitter風になってきた~~~~)
VIXが一日で30%も急騰して45まで跳ね上がっていることが最も象徴的。銀行間の疑心暗鬼も募り、LIBOR(ロンドン銀行間金利)が上昇。Credit crunch (信用収縮)懸念などと聞くと、これって、いつか来た道だよね。
欧州株2%前後の急落を受けたNY株式は、寄りつきから、いきなりダウ200ドル近い下落。結局376ドル(3.6%)もの下げで引けた。昨年3月から70%も上昇していたわけで、この程度の調整は序の口とも思える。
対照的に10年米国債の利回りが3.21%にまで買い上げられた。円も「安全通貨」として買われて90円割れの円急騰。
米国債も円も「安全資産」とか「安全通貨」と言われてもピンとこない。日本人として安全通貨「円」にマネー逃避などと言われても片腹痛いと呟いたら、すかさず「管理通貨制度のルールでプレイする以上、外為レートは所詮相対評価。あばたもえくぼ。」という書き込みが、hongokuchoさんからあった。皆、米国債も円もヤバイことは承知で駆け込んでくるわけだ。でも、雨宿りマネーであり、決してそこに長居を決め込むような「お引っ越しマネー」ではない。
米国債についていえば、駆け込み寺の規模が大きいことが安心感を与える。flight to safetyというよりflight to liquidity(「安全への逃避」ではなく「流動性への逃避」)。でも、その駆け込み寺が火事になったらどうする?いま、皆そこまで考える余裕はない。とりあえず凌げればオンの字。だから逃避マネーの買いによる円高は持続性に欠ける。
ユーロは対ドルでは1.25まで急反騰。ECB介入の噂にユーロショートポジションを過去水準まで膨らませた通貨先物投機家たちがすくんだ。そして、ユーロ円は111円。ポンド円に至っては128円。皆さん、欧州旅行するなら今だよ。
最後に、商品。原油、プラチナ、パラジウムなど産業用素材に強烈な売りが襲った。原油69ドルなど可愛いもの。プラチナが前日の下げに追い打ちをかけるように、さらに100ドル前後下がり、1500ドル台をも割り込んで1400ドル台に。暴落である。欧米経済が財政危機をキッカケにデフレの匂いを発し始めたことが、モロに効いた。そうでなくても投機マネーがドカ雪となり積もっていたから、大規模な表層雪崩発生となった。時あたかもロンドンでは、業界のプラチナ祭り開催期間中。恒例のジョンソンマセー「プラチナ年報」が発表され、下値1600ドルとされた途端の出来事。PTマーケットは今や怪我人続出となり修羅場と化した。
改めて2010年1月13日付け「プラチナETFについて」で心配したことが、モロに現実になってしまった。NYでもプラチナETF、パラディウムETFの投げ売りが指摘されている。
まだプラチナが1700ドルだったとき、セミナーで、2000ドルが800ドルに暴落した時の絶壁みたいな下落をグラフで示したことがある。そこで「2000ドルつけたことあるんですよね」と目を輝かせて言っていた男性投資家。私は「でも800ドルつけたことあるんだよ」と言おうとした時に、彼の姿は消えていた。このブログ読んでいる初心者の人達は他山の石としてほしい。
そして金もプラチナに連れ安で1170ドル台まで急落。その後1180ドル台まで戻したので、他のマーケットに比し、resilient=打たれ強い。下げ幅として、プラチナ10:金1程度の感覚。外貨準備としては買われることのないプラチナと、買われる金の違いが如実に出ている。
さて、このような相場擾乱の背景は何か。欧州財政危機。市場規制問題。そして中国引き締め懸念のトリプル材料が複合的に効いている。それに不気味なのが、朝鮮半島。久し振りの地政学的要因となる可能性があるので要チェック。中国の出方がカギだが、北朝鮮の兵士一人の「誤作動」とか「心理的動揺」により、押してはならないボタンが押されることで、取り返しのつかない事態に発展するようなリスクがあの国には存在する。
今のマーケットのキーワードは、de-risking=リスク離れ。キャッシュ回帰が目立つ。どこのファンドもキャッシュで溢れかえっている。
さて、お知らせいくつか。
―今日発売の日経マネー誌、筆者の連載コラム。タイトルは「ユーロ炎上」。P22-23。見てね。喫茶店でコーヒーケーキセット頼んだつもりで650円払って買って読んで、巻末のアンケート葉書の「金を通して世界を読む」のコラムに○印つけて投函すべし!(笑)
―来週24日(月)の午後3時30分からのテレビ東京、経済ニュース番組(ニュースFINE)に生出演します。
―日経プラスワンセミナー、東京、大阪で6月に開催します。
今回の講演は、「金を通して世界を読む 2010年バージョン」。後半ではFP深野さんと活字に出来ない本音トーク。彼もノリがいいから、話が脱線しっぱなしになるかも。まあ、二人が喫茶店でべちゃくちゃ喋っているのを隣のテーブルから耳をダンボにして聞くという感じで気楽に流してください。