豊島逸夫の手帖

Page821 ボルカ―・ルールの影響

2010年2月23日

あの一世を風靡した元FRB議長ボルカ―さんが、不死鳥のごとく蘇ってきた。というかゴーストのように忽然とマーケットに姿を現した。オバマの新金融規制案のブレーンとしてである。

その規制案の商品市場への影響については1月27日付け本欄で詳説した。今日は、債券市場への影響を考えてみたい。

マーケットのリスクが高まると、「質への逃避マネー」が、まずは米国債市場に流れる最大の理由は、いかに膨大な赤字を抱える国の国債とはいえ、米国債市場の流動性が豊富だからである。売りたければいつでも売れるし、買いたければいつでも買える。この安心感こそが、米国債が「安全資産」と呼ばれる所以であろう。(長期的には、巨額発行で需給関係が崩れ、値崩れするリスクがあるので、とても安全とはいえないが)。

そして、この流動性の大きな供給源が、金融機関の自己勘定部門なのである。顧客の売買注文に応じ、自分のリスクに於いて、常に「買値」「売値」を提示するのだ。この自己勘定部門がなければ、米国債がいつでも売れるとか買えるということにはならない。マーケットの潤滑油の役割を果たしているといえようか。

その潤滑油を、今、オバマは、規制により除こうとしている。もしそうなれば、米国債の「安全資産」としての最大のウリである流動性が枯渇してしまう。米国債の売買に支障を来せば、米国債の買い手が引っ込んでしまうだろう。だから、オバマとて、そう簡単に金融規制には踏み切れるはずもない。

なお、銀行の自己勘定部門がそれほどに目の仇にされるのにはワケがあることも忘れてはならない。

大手の投資銀行は、あのサブプライムの根源になったCDOという色々な債券のミックス定食みたいな証券化商品を、「自己勘定」で大量に抱えていたのだ。「自己勘定」で資産を抱えるということは、ディーリングの一環として、とりあえず保有するということなのだが、実態はCDOをズルズルと長期にわたって自己勘定に入れっぱなしにしていた。

このように見てくると、自己勘定部門規制問題は、複雑な要因が絡み合っているわけである。

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