2010年5月18日
2010年3月末時点のファンド運用資産報告(SECへの書式13F)が規定の締め切りである45日後の昨日出揃った。
ダボス会議で「金はバブル」と言いながら、自分のファンドはちゃっかりSPDRゴールドシェアを17トンも買っていたソロスが、1-3月で1.85トン利益確定売りしていたことが判明。保有量が、2009年12月末6,178,342株から2010年3月末5,585,947株に減少。1.85トンほど売って、それでも17.37トンは保有継続である。
この1.85トンというのもビミョーな数字。金はバブルだから売ろうかな...、でもメインストリーム(主流)のマネーが新規参入で次から次へと入って来るから、もうちょっと待とうかな...、そんな気持ちが見え隠れする。
そして注目のポールソンは全く売らず。SPDRゴールドシェア31,500,000株(約97.97トン)全量保有継続。まぁ、ここまで上がれば売り急ぐこともないだろう。顧客解約ラッシュに見舞われているわけでもなさそうだし。もし万が一売ってくれたら、そこは買いだろうけど。(本欄4月23日付「ポールソンが売ったら買い」参照。)
金価格は、あっというまに10ドルくらいは乱高下する状況だが、徐々に下値を切り下げてきている。さすがにNY金先物市場に700トン以上溜った先物買い越しポジションが重い。インドからは、新高値更新で 金製品の買いがぱったり止まったという話。書き入れ時の5月の祭礼シーズンも現地業界では空振りの可能性が囁かれる。
前回詳述した、新たな需給均衡点模索の過程だ。マクロ経済要因では、ECBが先日発表した国債購入プログラムは量的緩和じゃないよ、ということを示すために市中流動性吸収策を発表。これが評価され、ユーロは反騰。金は反落。
でもマーケットの9割はユーロ・ペシミズム(悲観論)に傾いている。だから少なくとも筆者はこれ以上ユーロ独歩安を追う気はない。米国経済も日本経済も爆弾抱えているわけだし。
筆者は2年前からユーロ・ペシミズムに傾いていた。「金を通して世界を読む」66ページに、「ユーロも弱さ比べに参加」と題して、負け組PIGSの経常収支赤字が、(統一通貨の制約下で)最終的には景気減速による輸入減少というメカニズムに均衡化されるしかない、と書いた。結果は、景気減速を嫌う政府が国債増発という形で赤字を引き取って今回の危機を招くことになった。経常収支赤字を招いた根源的構造要因(まず人生をエンジョイして払いは後で考えようという気質)には一切手つかずのまま。
でも、同じことは米国にも言えるわけだし。或る意味で、ソブリンショックって、(終幕と思った)サブプライムのエピローグみたいな感じもあるし。日本がエピローグの最後の場面の主人公にならないことを祈る。