豊島逸夫の手帖

Page939 デフレかインフレか パート2

2010年10月19日

本欄8月16日付に書いた首題のトピックの続編。

マーケットは引き続きデフレとインフレの挟間を漂流している。FTは、"It's probably 50-50 between deflation and inflation... We are in a trading environment."と書いているが、同感である。

金価格も、デフレ懸念に対する予防的政策の処方箋が「非伝統的劇薬」で、後遺症としてインフレが懸念されるので上昇しているわけだ。かといって処方箋を使わなければ二番底が懸念され、デフレスパイラルに陥れば破たんリスクが高まるので、このシナリオでも「破たんしない実物資産」として金が買われるシナリオになる。

米国のマクロ経済がどちらに転んでも、金には買いという状況ゆえ、金の買い方には安心感がある。ロングが売り手仕舞いを急がない。どころか押し目があれば、過剰流動性がすかさず新規買いを入れてくる。

しかし、そんなウマイ話が続くはずもない。

相場は明らかに過熱しているから、ここは冷静に考えてみよう。FRBが11月2-3日のFOMCで追加的量的緩和に踏み切ったとして、そこで市中に供給される追加的流動性が実体経済を、即、潤すことは考えにくい。銀行はバーゼルⅢにより貸出圧縮を強いられ、借り手は累積債務圧縮が遅々として進まないからだ。

そこで余剰資金が金市場に流入する結果としての金価格高騰であれば、これは立派なバブルである。いずれ量的緩和から出口戦略へ政策転換された場合には、民間にばら撒かれたマネーが回収されることになり、金買いのunwind=巻き戻しが起こるは必至だ。

しかし、インド中国など新興国の内需拡大のより金地金や金宝飾品の形で購入退蔵される分には、バブルとはいえない。今夜、日経CNBCで9時から放映される金特番に、上海に住む若夫婦が出てくる(はずだ)。彼らの金購入保有行動を見ていると、不透明な将来に備え金を蓄えるという長期資産保全である。値が上がったから手持ちの金地金を売るかと思えば、逆に下がったら買い増す相談をお茶の間でしている。夫「全部、金に注ぎこもうか」、妻「半分くらいにしときなさいよ」。

大局観で見れば、米国の余剰マネーがNYの金先物市場に流入して買い越し残高が800トンを超える状況は、明らかにオーバーシュートを示唆している。

しかし、調整局面で売られたところは、中国勢がすかさず買いを入れ「下方支援=中国語で下値サポート」に動くことも明白。

バブルっぽいマネーは浮動株主。バブルっぽくないマネーは安定株主。筆者も中国に出張すると長期強気に確信を持つのだ。なんせ中国の金解禁は始まったばかりだから。上海にいると、この相場はまだ「若い」と実感する。

なお、昨日は一時1350ドル近辺まで売り込まれたが、結局1370ドル前後の水準で戻ってきた。高度の空中戦である。

さーて、今晩は夜7時には日経CNBCスタジオ入りして9時から30分生の金特番出演。深夜は仕事の電話会議あり。明日早朝には6時20分くらいのテレビ東京モーニングサテライト(BSジャパンでも生放送と再放送あり)の特集コーナーに。スタジオ出演なので4時台にお迎えだと。

あまり寝れそうにないから、昼間は虎屋で季節の生菓子と抹茶でも賞味しつつ、軽――く流すか(笑)。

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