2010年3月11日
今日は初級編ではありません(笑)。
ドルキャリートレードという言葉が、メディアから忘れ去られたように出なくなった。あれほど「一世を風靡」したのだが。そこで「円キャリー」復活という話を、ぼつぼつ耳にするのだが、まだトレンドとは言えない。
たしかに、日銀がさらなる金融緩和措置を打ち出したことで、LIBORもドル3カ月もので0.254%、円3カ月もので0.250%と、7か月ぶりに円金利のほうが安くなってきた。でも、だからといって円キャリーに走る人達は少ない。そもそもドル円のLIBORの金利差といっても、わずか0.004%。しかも、ソブリンリスクで売られるユーロに対し、円が消去法で買われがちな局面もある。
筆者が思うに、今の外為市場動向の中でキャリートレードといえば、ドルユーロ円の先進国通貨を借りて売却し、新興国通貨で運用する、という程度のことしか考えられないな。債券市場でも、欧州のソブリン債が嫌気された反動で、アジア新興国のソブリン債に人気の気配が見られる。アジア経済危機の苦い経験を経て国の財務状況も先進国より良好というわけだ。
例えば、フィリピン政府のドル建てソブリン債による資金調達コストは一年前の8.4%から5.7%に劇的に改善している。インドネシアのも、同12%から6%へ下落。その背景として、インドネシアのGDPに対する公的債務比率が2001年の65%から30%にまで縮小していることが挙げられる。国の家計を身の丈に合わせて切り盛りすれば、債券市場も評価してくれるのだ。
ただし、アジア経済危機の教訓として、外貨建てで資金調達することのリスクが身に染みているので、アジア各国も国際金融市場での大型資金調達には慎重である。いつなんどきマーケットの情勢が急変するか分からんし。ゆえに、アジアソブリン債は出物が少ない。流動性が絶対的に不足している。だから希少価値があるとも言える。
ちなみに、アジア各国の国内市場で発行される国債は利回りが遥かに良い。政府から見れば資金調達コストは高い。それでも国内起債のほうが遥かに多いのは、やはり、マーケットが急変したときの外資国外逃避のリスクがちらつくからであろう。
深読みすれば、国内に住む現地投資家のほうが自国経済のアラもよく見えるので、より高い利回りを要求するのかも?