2010年8月17日
日本経済が減速しGDPベースで遂に中国に追い抜かれた歴史的な日に筆者は北京に居た。6月の人民元弾力化初日には上海の銀行に居た。どうも筆者の中国出張はそういう巡り合わせになる傾向が強いようだ。
今回の逆転劇は、マラソンで言えば、三位のランナーは猛スパートを仕掛けて二位を一気に追い抜いた感覚はない。二位がスタミナ切れで落ちてきたというのが実態だろう。
中国経済の減速も明らかだ。不動産規制が徐々に効いて、工業生産、設備投資、小売販売、銀行新規貸出、そしてマネーサプライ。全て減少傾向が鮮明だ。しかし、北京の中国当局から見れば全て「想定内」。ブレーキが効いて予定通りの減速である。
上海に居ると中国経済の地力を感じるのだが、北京に来ると政治の力を感じざるを得ない。減速傾向が顕著になっても当面当局は突っ張っており、緩和の兆しを見せていない。
北京では「エネルギーの消費効率改善」のため、「非効率」と看做された2000の工場に閉鎖命令。銀行監督当局は、30兆円相当の簿外ローン債権をバランスシートに組み入れを命令。銀行側は、増資による自己資本強化や貸出圧縮に追われる。
当局が強気に出ているのは、やはりインフレが気になるから。物価上昇率は2.9%から3.3%に上昇。食料品だけではなく人件費も上がっている。過剰流動性もインフレを示唆する。だから強気に突っぱねているわけだ。それに未だ経済に余裕もある。もし年末にかけ減速が悪化すれば、奥の手を出すだけの話。銀行貸出を、抑制から一夜にして「奨励」に転換すれば良いのだから。
なお、本稿を北京の部屋で書いているときに、ポールソンの2010年4-6月期運用資産開示(SECに対する13F報告)が飛び込んできた。注目のスパイダーゴールドシェアー3150万株は保有継続。評価は34億ドルから38億ドルへ上昇した。アングロゴールドも16億ドルから18億ドルへ。BOA株が29億ドルから24億ドルへ減少している。シティー株は20億ドルから19億ドルへ。
それでは、これから48時間、ぎっしり詰まった予定をこなしてきます。
PS
金価格が上昇してきた。
FRBの出口戦略棚上げ(利上げ先送り、超低金利長期継続)、米国債買い取り続行(長期的インフレ要因)が効いている。
金利を生まない金には、かなりの追い風。
米国10年債には、「お上が買ってくれるのなら」と買い安心感が急拡大。国債バブルかと言われるほど。利回りは2.5%まで急速に下げてきた。
債券高、ドル安、金高の構図である。