豊島逸夫の手帖

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表層雪崩 パート2

2010年7月13日

NY金先物市場では買い越し残高が111トンも急減して650.2トンに下がったね。表層雪崩が起きた。昨晩は金価格再び1200ドル割れ。

振り返れば、この1か月、マーケットは結果的にほとんど変わっていない。だからブログ更新の間隔も空きがち。と言ったら、(札幌のセミナーで)2-3行でも書いてほしいと言われたので、頑張ります(笑)。

以下に5月20日付「表層雪崩」を再掲。

(引用)
金価格は1200ドル割れ。プラチナは80ドル近い暴落で一挙に1500ドル台に突入した後、1600ドルの大台は回復して戻ってきた。

ここまでは想定内の調整。これからが正念場だ。筆者のスタンスは、これまで警戒モードであったが、ここからは徐々に強気モードに転換。底は浅い。1100ドル台になれば、アジア中東の現物買いも復活するだろう。ペーパーの投機買いの「ドカ雪」は、表層雪崩でかなり除去される。ふわふわの新雪(投機買い)と根雪(現物買いに支えられた底堅い部分)の境界線は1150ドル前後。でも、相場はそこまで下がらないような感じだ。下がれば待っている人達が多い。

長期上昇トレンドが崩れたとは全く思わない。逆に、健全な調整が入ることで、weak long(弱い買い持ち)が振り落とされ地合いは固まってゆくだろう。

マクロ経済的には、引き続き欧州財政危機、そしてユーロ不安だが、欧米経済にデフレの兆しが見え隠れし始めたことが、商品全体としては やや気掛かりではある。欧州の緊縮政策、米国も消費者物価上昇がかなり鎮静化の様相。家計部門の累積債務が残る以上、肝心の個人消費も力強さを欠く。もしデフレ基調がぶり返すと、原油、プラチナは、投機売りの波に晒されることになる。

プラチナは、やはり、流動性の絶対的限界が値動きの荒さとなって出てきた。先物買いポジションが、かなり上でしこってくるので、新規買いが入っても上値が重くなる展開だ。

外為市場ではユーロが結局は買い戻された。やはり過去最高水準に積み上がったユーロ先物売りポジションの手仕舞いが入りやすい。ただし、ユーロが反騰したところで、新規売りを誘うような欧州関連の材料にも事欠かないが。

メルケルの空売り規制は、逆効果になったね。投機マネーを追いだすつもりが、健全な投資マネーまで流動性が薄くなることを嫌い、出て行ってしまった。昨晩の欧州株は総崩れ。しかしNY市場になると、米国人からは米国経済と欧州経済のディカプリング(非連動説)が頻繁に聞かれる。それみろ、私達の米ドルに対抗しようなどと、ユーロを旗揚げしたが、結果はこのザマだ。いざとなればマネーもこっちに戻って来るではないか。といいたげな米国市場だ。
(引用終わり)

マーケットの次の一手も、6月17日付「ストレステスト結果公表へ動く」で書いたとおり。今朝モーサテのスタジオコメンテーターで出ていた業界の妹分、シティーのシニア為替アナリスト尾河眞樹も言っていたが、公表するぐらいだから、さほど悪くはなさそう。なお、日経マネー次号には彼女との誌上FX対談が出ます。「株式投資ファンがFXを始める前に知っておきたいこと」という題。株でやられた分をFXで取り戻すという「危険な発想」に対して釘刺そうという立て付け。外為も そんなに甘いもんや、おまへん。それにしても、Twitter始めたら、若いFXのフォロアーがドッと入ってきた。TwitterのFXランキングで6位になっているほど。↓
http://fx-twnavi.jp/ranking/
スイス銀行外国為替貴金属部出身の人間として違和感はまったく無いけど。

それからセミナー質疑応答で頻繁に出る質問に関しては、以下のアーカイブを参考にしてください。
―円高はどこまで続く↓
7月5日付「ドル→ユーロ→ドル→円」
―リーマンショックみたいなことになるの?↓
5月26日付「リーマンショックの再来か」

最後に今日の気になる記事。
日経1面トップ。「年金積立金 減少進む 国債9年ぶり売り越し 昨年度」
少子高齢化に伴って家計の貯蓄率が将来マイナスに転じれば、銀行などの国債買い余力も低下する恐れがある。セミナーで語ってきたシナリオが現実化する兆し...。ヤな感じ。

さて、仕事のほうは、すっかり新興国チームに組み込まれ、中国出張の頻度も月一から月二へ増えそう。それにインドも加わる。ゴールド・マーケットという特別ルートを通じて、「客分」では踏み入ることはまず無い「本陣」に出入りするようになった。面白い。

2010年