豊島逸夫の手帖

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誰が円を買っているか

2010年8月12日

東京市場では円高ドル安一色だけれど、昨晩の欧米市場はドル高一色だった。

まず、世界の外為市場の出来高シェア見ると、米ドル43%、ユーロ19%、円8%、豪ドル3%。そこでドルはユーロに対し昨晩は急騰したのだ。1.32台から1.28台へ。円で言えば、一晩で4円動いた感覚である。

その背景は、米中景気減速懸念強まるなかで、マネーがリスク回避モードにシフトしたこと。相対的に安全性が高いと思われる円、米ドル、米国債が買われた。米国債が買われるのは、flight to safety=安全性への逃避というより、flight to liquidity=流動性への逃避だけれどね。

金も同様に買われたものの、中国懸念で商品が売り込まれる流れに引っ張られ、連れ安に。ドル高も金売り材料になった。

さーて、円高だが、今、円を買っている人達は、おおむね二種類に分かれる。
―雨宿り派:嵐が過ぎるまで、とりあえず円の軒先で凌ごうというマネー。
―ひともうけ派:どさくさに紛れ、ここで流れに乗って一儲けを目論む投機マネー。

これに対し、お引っ越しマネー=長期的に円を保有する意向のマネーは少ない。国の借金900兆円超えとなる国の通貨を長期に持ってくれる奇特な御仁は見当たらない。

それでも外国人が円を買うのは、日本の個人投資家が潤沢な貯蓄をバックに実質的に連帯債務保証してくれているから。もし、その連帯保証人たちが、これはヤバイと海外に資本逃避など始めれば、今の円高など軽―く吹っ飛んでしまう。

虫の目で見れば円高。鳥の目で見れば円安。ヒステリックに危機感を煽る円高報道に巻き込まれないようにね。

筆者の知人の欧米通貨トレーダーたちは、たしかに円ロング(買い持ち)が多いけど、長く持てる通貨とは誰ひとり思っていない。円ロングだからメディアにコメントを求められれば、当然、円強気論のポジショントークになる。それがそのまま「欧米の識者の見方」として日本に紹介される。でも彼らは今か今かと「出口戦略」のタイミングを見計らっている。最後にノコノコ出てきて円を買ってくれる御仁でもいれば、それこそ、この真夏に、飛んで火に入る...、なのだが...。トランプのババ抜きでジョーカーを抱えた心理なのだ。

そもそも、市場関係者の9割が同方向を向いて円高論を唱え始めると、本能的に筆者は引いてしまう。金の史上最高値更新1250ドルのお祭り騒ぎの時と同じ反応である。

2010年