豊島逸夫の手帖

Page941 通貨戦争に勝者は無い!

2010年10月22日

今週末のG20。当然、通貨戦争が今回のトピックだ。しかし進展が見えるとも思えぬ。「金に何が起きているか」の「国際不均衡から見えてくるもの」の章で詳述したことだが、通貨戦争の結末は「全員、負け」と決まっている。保護主義→世界経済縮小均衡のシナリオだ。

しかし、「停戦協定」が結ばれ、各国がドーハ・ラウンドなど多角的貿易交渉で歩み寄れば、貿易自由化→世界経済のパイ拡大→「全員、勝ち」のハッピーエンディングになり得る。その停戦協定に向けての協議の場がG20なのだが...。

通貨戦争の主戦場は米中関係。中国は人民元高を人為的に阻止することで米国に失業=デフレを輸出している。その招かざる輸入品=デフレを水際で食い止めるため、米国は量的緩和を実施。ばら撒かれた米ドルは、過剰流動性と化し、中国国内に波及。中国の失業輸出に対して、米国は中国へインフレを輸出して反撃に出た結果になった。

中国は、その招かざる輸入品=インフレを水際で食い止めるため、ついに利上げを決定。しかし、人民元の利上げは、金利差要因で熱銭流入を加速する合併症も引き起こす。諸刃の剣だ。

昨日の中国経済統計発表では、消費者物価上昇率が直近で3.6%と上昇傾向が確認された。事前予測の範囲内だったのでマーケットにサプライズは無かったが。同時に発表された経済成長率は9.6%と高水準なので、北京の党が危惧するのは(米国に輸出した)失業より(国内に燻る)物価高による人民の不満である。

そこで筆者が思い出すのは、上海で会った30歳前後の若いスタッフの話。新婚ホヤホヤながら、独身時代に貯めたおカネがあるのでマイホームを購入したい。ところが、お金持ちたちが投資目的で優良物件を次々に買い漁り、不動産価格を吊り上げるので、自分達の財布では手が届かなくなってしまった。しょうがないから貯めたカネで株やら商品の売買を繰り返している。まぁ、この例は中国基準では「ぜいたくな悩み」の部類に入るだろうが...。

問題は、中国が米国にデフレを輸出し続けると、結局、米国がメイドインチャイナの製品を輸入する購買力も失われてしまうことだろう。

さて、足元のマーケットでは、金銀価格が再び急落。金は1326ドル、銀は23.20ドルまで下がってきた。調整モード入りで、一息。

モーサテのコメントでも述べたことだが、追加的量的緩和を先取りして株も商品も、めいっぱい価格に織り込んだ現状が気になる。噂で買ってニュースで売れのパターンになる以前に、材料出尽くし感が出るかもしれない。

ここから来月初めまで、雇用統計、FOMC、米国中間選挙と派手なイベントが並ぶ。中国からのサプライズにも身構えつつ、2010年マーケットの第三コーナー通過である。

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