豊島逸夫の手帖

Page815 EUのギリシア支援発表―エピローグは未だ

2010年2月12日

昨日の休日はスキー場ではじけ、今日はみっちり仕事、明日はまたスキー。絶好調です。

さて、今朝NYの友人と各市場場況についてチャットしながら気がついたこと。債券市場では、EUのギリシア支援がまとまり、投資家のリスク意欲が戻り、「安全資産」の米国債は売られた。この日実施された30年国債の入札は不調に終わった。

ところが金市場では、PIGSのソブリン・リスクが信用不安再燃に拡大することが材料視され、flight to quality=質への逃避マネーが金市場に流入。

ふーむ、どうやらマーケット全体のマネー・フローとしては、未だ未だ不安感は残るので「質への逃避」が意識される流れだが、その受け皿としての筆頭格=米国債は格下げ懸念もあり、代わって破たんリスクはゼロの実物資産が浮上しているということか。

筆者が見るに、ギリシア問題については、PIGS諸国の国債デフォルト・リスクに対する保険=CDSを大量に抱える欧州系銀行のバランスシートが、一番の心配の種。バーゼル2により、銀行の健全性を示すインディケーターである自己資本比率は、米系銀行より欧州系銀行のほうが遥かに低い状態となっている。

ギリシアに対する銀行供与信用残高を見ても国別にこうなる。

フランス   755億ドル
スイス   640
ドイツ   432
米国   164
英国   123


さらに、各国国債の5年ものCDSをベースに算出した国別デフォルト・リスクのトップ10は以下の通り。(これは日経マネー最新号、筆者コラムに掲載した表と同じ。)

1.ベネズエラ   56.26%
2.ウクライナ   52.91
3.アルゼンチン   46.06
4.パキスタン   38.11
5.ラトビア   30.47
6.ドバイ   25.71
7.アイスランド   24.66
8.リトアニア   19.11
9.カリフォルニア   18.97
10.ギリシア   18.67

(カリフォルニア州の財政危機もギリシアと同格に扱われている。)

米系銀行も地銀中心に商業用不動産というスローモーションで発火しそうな時限爆弾をかかえるが、欧州系の方が抱える爆弾については、ギリシアが導火線となり発火のリスクに切迫感がある。それに米系銀行は、金融危機から脱するため抜本的リストラを実行し、資産査定でもとりあえず「可」のお墨付きをもらった。しかるに欧州系銀行は、検査入院さえ未だ終わっていない。病巣の確定、そして手術は、さらにその後という感じだ。

だからこそ、金の世界から見れば、昨年、欧州とくにドイツ、スイスで金現物の購入が数倍という規模で増加したのだ。日本でもペイオフ解禁前夜に銀行預金をおろして金を買うという動きが顕在化して話題になったことがあるが、古今東西、投資家の気持ちというものは変わらないと見える。

それからEUがギリシア支援発表といっても、結局のところは財布の紐を握っているパトロン格のドイツ、メルケルおばさま次第でしょ。他のEU諸国は 人の台所までかまっている余裕無し。でも「ギリシア、頑張れ。なせばなる!うちらも仲間だぜ。」と精神的サポートをぶち上げる分には懐が痛むわけでもない。だからEU発表といっても虚しいのだ。

別途IMFによる支援の可能性も語られてきたが、IMFのおじさま達に支援を頼むと、こうしろ、ああしろと、やたらに緊縮措置を押しつけられるので敬遠されがちだ。やっぱりEU諸国のlast resort=最後の頼りは、メルケルおばさまじゃないかな。でも彼女の立場では、ギリシアを救済すれば、スペイン、ポルトガルがドイツからの支援をアテにしてしまう。いわゆるモラルハザードの問題が生じる。辛いのは、例えばスペイン向け与信が最も大きいのはドイツの銀行で約21兆円。ドイツGDPの6%に相当し、スペインが混乱すればドイツの銀行で損失が拡大する。(本日日経朝刊国際面「ギリシア不安 欧州銀に影 南欧へ巨額与信 深刻」の記事参照。)

なお、昨日の米国国債入札の話題だが、30年国債入札の25%を買い占めた参加者がいて、それが誰なのかとフロアーで話題になった。大手債券ファンド、あるいは中国、あるいは公的資金?イマジネーションは拡がる。

さて、金市場だが、20ドルほど反騰して1090ドルを回復しているが、その背景として
◎ギリシア問題 ― ユーロ安 - ドル高 - 金売りという連想から、ギリシア問題 - ソブリン・リスク - 信用リスク↑ - 金買いという連想に転化の兆しが見られる。
◎昨日のEUによるギリシア支援発表に際し、マーケットの一部が恐れていた公的金売却による支援金ねん出が語られず、その「噂」を当て込んで金をショートしていた投機筋が諦めて買い手仕舞った。「噂で売って、ニュースで買う」の思惑が外れた例。
◎中国の政府系ファンド=CICがSECへの四半期情報開示で、SPDRゴールドシェアを4トンほど購入していたことが明るみに出たこと。「金を通して世界を読む」176ページに、「中国政府系ファンドの可能性」について論じたが、そこで政府系ファンドが金を買ってもIMFへの報告義務はない と書いた。しかし、金地金購入ではなく金ETFという現物の裏付けのある有価証券購入となると、SECへの情報開示義務(四半期に一度)があるわけだ。CICによる商品ETF購入としては、すでに2月11日付け日経商品面に原油ETFの話も出ているよ。

金価格へ話を戻して、まぁ、ユーロ安、ドル高といっても、ドル不安は消えず。ドル安は外為市場の相対評価なれど、ドル不安は絶対的投資家心理。昨年は、「ドル安―金高」がキーワードだった、今年は「通貨不安-金高」がポイントだね。

さて、昨日食したもので印象深かったのは、越後湯沢の駅で食べたホカホカの笹団子。幾重もの笹に包まれ、自然の笹の香りが沁み込んでいる。やはり ホンモノは違う。ス―パーで売られる笹色の餅は、似て非なるもの、と実感。その甘さが、スキー後に飛び込んだ越後湯沢源泉の「山の湯」で芯まで暖まったカラダに沁みたのだ。1個130円でした。

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