豊島逸夫の手帖

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きしむ米中関係

2010年2月16日

今年1月5日付け「2010年 マーケットのリスク番付トップ10」の横綱に挙げられたのが「米中関係」であった。

その後の展開を見るに、米国の台湾への武器売却やグーグル問題をきっかけに米中関係は正に軋み始めた。中国が強気なのは、サブプライム危機で欧米型資本主義の限界が露わになったからだ。それまでは欧米型経済モデルを目標に「追いつけ追い越せ」だったが、今や「なんだ、欧米型経済といっても大したことないじゃん。だいたい人間にやりたい放題やらせれば、なにやるか分かったもんじゃない。やっぱり全体的に規制せねばだめだよ。」という論調が中国国内でも勢いを得ている。

先日上海で多くの金融関係者と会ったときには、日本経済の例がしばしば引き合いに出された。「日本は、米国の圧力に屈し、プラザ合意を受け入れ、円高を余儀なくされ、バブル破たんとともに失われた10年を迎えた。我々は同じ過ちを繰り返さない」という論調である。要は、米国が人民元を市場の実勢に任せ高くしろと迫っても、その要求には屈しないよというメッセージなのだ。(「米国の圧力に屈し」発言を私に面と向かって述べた次長さんに、すかさず部長さんが、日本からの賓客なんだから控えなさい、みたいに注意していた様子。でも、筆者はそういうナマの声を聞きたかったので、遠慮は御無用と言っておいたけど)。

色々な中国側の意見を聞いたが、筆者が気になったことは、経済大国としての中国を誇示しつつ、その経済大国としての責任も果たすべきでは、という問題になると、いやいや我が国はまだまだ新興国ですから、と逃げてしまうことかな。その大国としての責任とは、温暖化問題で世界的コンセンサスが出るように協力的態度を示すこと、イラン核問題では、いまやロシアまでイランに批判的になったのだから国際的経済制裁に歩みよること、そして、なんといっても中国国内にカネが溜まり過ぎなのだから、外為市場を自由化して人民元を市場の実勢に任せ高くすること。(人民元が安すぎるので、他国の輸出品が売れず、結局、中国は他国に失業を輸出していると批判されている)。

対するオバマは処し方が難しいだろうね。国内では保護主義の台頭で中国バッシング。でも中国は米国債を大量に購入してくれる大事なお客さまでもあるわけだし。

次に、今日もギリシア問題について。

思うに、この問題、デリバティブなど存在しない時代であれば、単なるギリシア国債という限定的な問題であったろう。でも、いまやギリシア国債が債務不履行になった場合の損失を保証するようなCDSが投機的に売買される時代だ。ペーパー化されたデリバティブが世界中にばら撒かれているという意味では、サブプライムを連想させる。だから、私はギリシア国債など持ってもいないし関係ないわという人でも、実は証券会社から勧められた商品にギリシア国債やCDSが組み込まれていたりするわけだ。サブプライムの時には、埼玉県の某福祉団体が余剰金運用でその手の商品を購入して大損。障害者用車両を売却する羽目になった、という話もあったっけ。

ソブリンという言葉も、これまでは国の信用がバックなので安全というイメージで個人投資家向け商品名にも堂々と使われてきたが、今やリスクの代名詞みたいになってしまったしね。グロソブはすでにギリシア国債を売却したらしいけど。

2010年