豊島逸夫の手帖

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中国不動産規制とSECの言い分、GSの言い分

2010年4月21日

読者から、不動産取引新規制導入で上海株が下げたけど、その内容が日本国内のメディアにさほど出ていないので説明を、というリクエストがあった。

最近二段階に分けて規制強化されている。

1.二軒目の住宅購入に関して、必要な頭金を40%から50%へ↑。さらに二軒目の住宅ローン金利も↑。一軒目の住宅購入に関しては、90平米以上の物件につき、頭金は最低30%。

2.次に先週末発表の新規制。不動産価格騰貴が顕著な地域における三軒目の住宅購入に関しては、銀行の住宅ローン融資を停止する。当該地域での居住を証明する書類がなければ住宅ローン設定を禁じる。地方政府は任意で一定期間内の住宅購入総数の上限を設定することが出来る。

この第二弾の措置はかなり厳しいね。大都市の住宅価格を10%程度押し下げ、高額物件は20%以上の下落という予測も流れている。商業銀行の不良資産急増も懸念されICBCの株価も派手に下げた。

筆者の見方は変わらず。バブルは局地的に封じ込められる。中国経済は低レバレッジ。中国経済高度成長には適度のバブルが必要。中国には一貫してブルです!なお、本日発売の日経マネー本誌20-21ページの筆者連載コラムでもこの問題について触れているので読んでね。買って読んだら巻末のアンケート葉書で「金を通して世界を読む」に○して投函すること(笑)。

なお、表紙には金地金写真が使われています。
「表紙は金地金(500g)をモチーフとしたデザインであり、金地金の実寸とは異なるものです。ご了承ください」という断り書きも。色々気を使うね、編集者も。

話題は変わって、GSの言い分。SECの言い分。まずSECの言い分。
―問題のCDO組成にポールソンが「スポンサー」として関与し、どの住宅ローン債券を組み込むかについて助言を与えているということを買い手=顧客に知らせなかった。
―さらに、そのCDOの価値が下落することをポールソンは見込んで、そのCDO価格が下がれば儲かるCDSを購入していたことをGSは顧客に知らせなかった。

対してGSの言い分
―買い手=顧客といっても、個人投資家ではなくプロである。具体名は(IKB=ドイツの金融機関とACA(=CDO組成会社)。プロ対プロの売買取引で、手の内を明かすか?
―ポールソンは今でこそ有名だが、その当時は無名だった。ポールソンが組成に関与と言ったところで、投資家は気にも留めなかったであろう。
―GS自身も当該CDOを自己勘定で抱え、70億円相当も損している。

こんなやり合いである。
SECもマードフ・スキャンダルなどで組織としての能力を問われてきたので、今回は意地になって、組織の存在を賭け、徹底追及の姿勢だね。そもそもGSに書類提示を求めた際にGA側が傲慢な態度で拒否したことも、SECの心証を害したらしい。

31歳の若いGSのexecutive director(本件当時は28歳)1人はやり玉に挙がっていることでも憶測が飛ぶ。スケープゴートか。SECはこの人物に関しては決定的証拠を握っているのでは、等々。

余波としては、ドイツの金融機関が、堅実という評判とは裏腹に、いかに複雑な証券化商品に巨額の資金を投入していたか、再び明るみにでてしまった。背景は日本同様、貸付が伸び悩み、溢れる個人預金の運用先に困っていたらしい。キリギリス組の国の民間銀行の宿命か。

2010年