豊島逸夫の手帖

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フランスで暴徒化したデモを見て思うこと

2010年10月29日

10月第四週にフランスの全ての製油所で労働者がストに入り、石油貯蔵施設は封鎖され 市民はガソリンの買い占めに走った。そして道路を封鎖するトラック運転手。学校を閉鎖に追い込む生徒たち。無秩序な暴徒化していった。

事の発端は定年退職年齢を60歳から62歳に引き上げるという年金改革。この、いまや多くの先進国で避け難い年金問題に対するフランスの反応を見て感じたことは、やはりマーケットの力で極限状態にまで追い込まれないと、国民は厳しい財政再建を受け入れないということだ。

ギリシアはマーケットの売り圧力で国債デフォルト寸前にまで追い込まれ、やむなく歳出大幅カット、公務員削減、給与減額など厳しい再建案を飲まざるを得なかった。それに比べ、定年退職年齢を60歳から62歳に引き上げる程度の改革は甘いものである。しかし、その程度でもフランス国民の反対は凄まじい様相を呈した。

ということは、まだフランスは極限に追い込まれた状況とは言い難い段階に留まっているからだろう。マーケットの洗礼には晒されていない。

実はこの状況は日本にも当てはまる。日本国債はほとんどを日本人投資家が保有しているため、過去にも外国のヘッジファンドなどが投機的売り攻勢をかけても悉く失敗してきた。日本国債は真のマーケットの洗礼には晒されてこなかったわけだ。

しかし、今後、団塊の世代などが蓄えを食いつぶしてゆくにつれ、巨額の日本国債を日本人が保有するという国内中心の市場構造は大きく変化することは避けられまい。そこで、日本国債が真にマーケットの洗礼を受けることになる。巨額の累積債務を背負い高齢少子化、移民は拒む国の発行した国債をどこの海外勢が買ってくれるであろうか。ギリシア国債のように中国マネーにすがることになるのだろうか。

日本で最近見られる「おやじ狩り」などの社会現象を見るに、フランスの街頭デモ暴徒化の報道が他人事とは思えないのだ。

さて、足元のマーケットはQE2(金融緩和第二弾)の規模縮小の観測記事の影響も24時間で薄れ、ドルは再び売られ、金はアッという間に20ドル反騰して1340ドル台回復。

本欄読者にはお馴染みのJeff's seminar indexはまだ生きていた(笑)。というのも2週間の間隔をおいて、今日からセミナー三連チャンが始まるから。今日は金融庁の職員研修講師に招聘されて庁内で講演。明日明後日は読売新聞主催の九州縦断資産運用セミナー長崎熊本篇。台風が気になるが。(何が気になるかって、台風で鮮魚の水揚げが減り、鮨屋さんのネタが無くなるのではないかという不安 (-_-;)

2010年