2010年5月26日
リーマンショック再来か。最近、このような質問を頻繁に受ける。再来ではない。根源的に異なる。
サブプライム危機は、複雑な仕組みでレバレッジがかかった質の低い投資商品が世界中にばら撒かれた結果、起きた。世界中を揺るがすような巨大地震が国際市場全体を揺るがせた。
しかるに、今回の問題は、欧州財政危機(それに伴う流動性不安)、金融規制導入、中国バブル懸念、そして朝鮮半島緊張と、4つの要因が複合的に絡み同時進行していることが特徴だろう。どれをとってもサブプライムほどの震度(マグニチュード)ではない。しかし同時多発なので、マーケット内で不安感が共鳴共振現象を起こしている。
経済回復期待感からNY株が昨年3月から7割前後も上昇したものの、実体がついてゆけず、バリュエ―ションとして割高感が漂い、調整の兆しが見え始めていた矢先でもあった。
しかし、リーマンショックの教訓で、マーケットにはディレバレッジ(レバレッジ外し)の傾向が顕著に出ていたので、リスクの連鎖が極端に増幅される懸念は相対的に低い。
ただ、市場参加者がダブルディップ(二番底)の懸念に揺れ、マインドが委縮しているので、de-risk=リスク圧縮の傾向が加速している。
要は、リーマンショック以降、縮小均衡路線を辿っていた世界経済(つまり、ちんまりまとまった経済回復)だが、さらに縮小幅が増幅したということだろう。
再びデフレの兆しも出始めているが、金融危機後の世界同時不況のようなデフレスパイラルが加速し、破たんリスクが急上昇するほどではない。マクロ経済的には、指標が好転しつつあることも事実で、まぁ、マイルドなデフレ懸念というレベルだと思う。
ただ、4つの材料が今後どのように相互影響を与えつつ展開してゆくか 先が読めない。思わぬ合併症が生じる可能性も否定できないので厄介ではある。リーマンショックは急性の心筋梗塞みたいな症状であったが、今回は財政問題とか規制問題など症状の慢性化が懸念される。
なお、金価格は1200ドル回復。VIXが30から40のレンジで激しく振れるなかで、市場不安心理を表す金価格が再上昇中だ。足元の金価格の上げ幅はマーケットのリスクプレミアムとも置き換えられようか。単にドル高ドル安で割り切れる相場ではない。4つの材料を複眼で追わないと今の金市場は読み切れない。
なお、今日、2010年1-3月の金需給統計が発表される。魚の目で、冷静に市場を見る良い機会であろう。足元では金ETFの残高が急増中。年金は金という新たなアセットクラスにexposureするにあたり、ある程度目をつぶって、エイヤの気合でまとめて買わないことには、コツコツ少しではポートフォリオ全体のリスク分散にならないのだ。
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