豊島逸夫の手帖

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円高とかけてオザワと解く

2010年8月26日

中国の投資家は金自由化で金を買い進み、ドイツの投資家は欧州財政不安の中で金貨を買い増す。NYの機関投資家は金ETF買いを加速。一方、宝飾需要は高値で買い控え傾向続く。中央銀行が売り手から買い手に転じる傾向は定着。高値圏で金や金製品を売り戻す顧客は跡を絶たない。

昨晩発表になった最新金需給統計が示す金市場の景色である。

まず、需要項目で見ると---
宝飾需要 406トン(前年同期比マイナス 8%)
投資需要 608トン(前年同期比プラス 42%)
コモディティーの顔が薄れ、資産、マネーとしての面が強まる傾向が続いている。とくにETFが291トン(プラス414%)と激増。

国別投資需要を見ると---
中国   36.3トン(プラス121%)
インド  41.5トン(プラス  7%)
ドイツ  44.4トン(プラス 59%)
スイス  26.1トン(プラス 19%)
米国   30.3トン(プラス 19%)
なお、日本は際立って、堂々(?)のマイナス20トン!(デフレが際立つ国らしい...。)

それから、供給サイドを見ると---
リサイクル 496トン(プラス 35%)
年間ベースで、2008年1316トン、2009年1673トンと過去最高を更新したが、今年2010年も今のペースでゆくと過去最高水準になりそう。

公的売却 マイナス8トン
昨年2009年1-3月期からの四半期ごとの推移が以下のようになる。
プラス62トン、マイナス9トン、マイナス11トン、マイナス13トン、マイナス38トン、そして今期マイナス8トン。
連続5期マイナスの売却、つまり公的部門(中央銀行とIMFで構成されるセクター)が純購入を続けていることが確認されたわけだ。

ちなみに今期のIMF売却量は47.0トン。累積総量が283.1トンとなり、残り120.2トンとなった(総売却予定量403.3トン)。

それからロシアの金準備増強が今期は34トンほどに達した。

総じて、金の需要総量ベースでは1050トン(プラス36%)。新高値圏でも高値慣れしてついてくる現物の買い手、上昇を続けるモメンタム(勢い)に乗ってくる現物の買い手。ペーパーではなく現物の買いがついてきていることが確認されたので、金高騰を単に「バブル」では片付けられないことも確認されたと言えよう。

ただし、今後新高値更新ともなれば、リサイクルにも弾みがつくから 上昇へのブレーキも強くなりそうだ。

さて、足元の金価格は1240ドル突破。ユーロが買われれば、ドル安で金買い。ユーロが売られれば、欧州経済不安とされ、ドルと金がリスク回避で買われる。

要は、ドルもユーロも不安。通貨不信の中で無国籍通貨の金が買われるという毎度お馴染みの流れである。(なぜかこの議論で、独歩高が続く円が代替通貨候補に名前が全く挙がってこないね。党内で買われているが党外の人望は薄いオザワさんみたい...。)

2010年