2025年4月22日
NYと中国の投機筋の共闘で、ついに3500ドルが視野に入るところまで急騰してしまった。筆者は、この異常な値動きを素直に歓迎できない。懸念している。
今回の上げ要因は、トランプ氏によるFRB議長解任問題。
実はベッセント財務長官が4月15日、ブエノスアイレスでのブルームバーグとのインタビューで「次期FRB議長候補との面談を秋にも行うことについて大統領と話し合っている。」と語った。筆者は、これは聞き捨てならぬ発言と早速、日経電子版に書いた。
ベッセント財務長官「次期FRB議長候補面談、今秋にも」 - 日本経済新聞
しかし、市場が問題視することはなかった。筆者は、ヘッジファンド出身の穏健派ベッセント氏がこの問題は市場混乱を招くと判断して、警告の意味で語ったのだと解釈している。
実際に市場が騒ぎ出したのは、トランプ氏自身がSNS上で口汚くパウエル氏に対する「口撃」を開始した時だった。
とは言え、結論から言えば今誰がFRB議長になっても、「米国売り」という極めて不安定な市場環境の中で、FRBのミッションである物価と雇用の安定を同時に実現するのは無理筋である。昨年は米経済軟着陸を意味するソフト・ランディングという用語が流行語の如く市場では使われ、株価を支える役目を果たした。しかし、それもトランプ大統領の関税政策により「懐かしの流行語」になってしまった。ソフトという英単語は軟弱という意味もあるので、今年市場が懸念するのはソフト・エコノミー。景気後退だ。
しかし、関税を武器に貿易戦争を仕掛け、且つソフト・エコノミーは絶対避けたいトランプ大統領は、景気下支えのための利下げをFRB議長に強いる。とは言え利下げは諸刃の剣で、ようやく収束が見えてきたインフレを再燃させる副作用がある。
市場の反応も、利下げ強要発言を受け、ドル長期金利(米10年債利回り)には上昇圧力がかかっている。トランプ氏の金融リテラシーに対する疑念が、金利・ドル・株のトリプル安を誘発してしまったのだ。
ただでさえ、保護主義の風潮は世界経済の縮小均衡をもたらし、限られたパイの取り合いになるは必至の情勢だ。株価も長期上昇どころか長期下落のリスクがある。
トランプ氏はその責任をパウエル氏に押し付ける構えだが、その誤ちのとばっちりを日本経済そして日本株まで受けるとなると、もはや他人事ではない。米国のスタグフレーションに勝者はないのだ。
筆者は、トランプ政権2.0の4年間は市場にとってひたすら耐える状況になることを覚悟している。金価格もジェットコースター相場になるが、歴史的高値圏に留まると見る。
なんらかの健康上の問題とか個人的理由でトランプ氏が大統領職から降りるような緊急事態が勃発すれば、金価格は下がるであろう。