豊島逸夫の手帖

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週明け、いきなり3400ドル突破

2025年6月3日

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昨日午後、久しぶりにブログを書いた時はNY金3320ドル台。上の図の緑線(スポット)では3300ドルそこそこであった。それが今朝はNY金8月もので3400ドル突破。

これはさすがに解説せねばなるまい。
いくつかの複合要因が共振して金価格を引き上げた。

1.トランプ氏が中国の関税関連対応が遅いと非難したことから米中関税協議とん挫の可能性。
但し、ベッセント財務長官は日曜日の米CBSニュース番組で「週末にトランプ氏・習近平氏の対話が予定されており、折り合いの可能性もある」と発言。

2.アルミ・鉄鋼製品に対する関税を25%から50%に引き上げ。EUは特に激しく反発。米国内関連産業は熱烈歓迎。

3.来年の中間選挙を視野に、いよいよ大型減税恒久化の動き鮮明に。米国財政赤字膨張問題を米債券市場では特に強く問題視。米国債発、米国売り第二波もちらつく。

4.外為市場ではドルインデックスが98にまで低下中。
国際基軸通貨ドルに対する信認低下顕著。

5.FOMC議事録でスタグフレーションが話題になったことを確認。

6.それに関連して、ウォラーFRB理事が利下げ不可避との発言。不況に対する救済的利下げというより、インフレ指標(PCEインフレ率)が順調に低下しているから、金利水準を引き下げるべきとの論。市場では年内利下げ回数予測が、1回から2回に増えた。金利を生まない金には追い風。
なお、原油と住居費を除くスーパーコアインフレ率が低下していることも注目されている。

7.ウクライナが3000キロメートル以上離れたシベリアのロシア長距離空輸基地にドローン攻撃。
これは筆者も驚いた。ロシア深部の核戦争対応の長距離戦略爆撃機100機のうち30機が破壊されたという。衝撃的な地政学的要因である。

以上、これだけ重要要因が並ぶと、異次元の金価格展開が視野に入る。

今週は要経過観察である。
特に7番目の要因は日本人として、金を長期保有して役立たないのが一番とつくづく痛感する。

2025年