2025年2月21日
今日はドル円の話。
昨年、円キャリートレードで大規模な円売り攻撃を仕掛け大儲けした国際通貨投機筋が、今回の円高局面では打って変わっておとなしい。「149円台になって初めて日銀追加利上げ説を知った」と明かす。「日銀の動きの確度はいかに」と逆に尋ねられた。
やはり、トランプ経済政策が孕むドル高圧力が無視できないようだ。しかも株式、債券、外為市場全てが不透明感に包まれる中、敢えてポジションを張るのは、1週間ほどで手仕舞う短期投機筋に限定される。まともな運用をするファンドの人たちがsmall guys(小者たち)と呼ぶ独立系の集団だ。
昨日の場合は、たまたま新規失業保険申請件数、フィラデルフィア連銀製造業景況指数、景気先行指標総合指数が全て下振れしたことで、NY時間午前中から「景況感悪化モード」が顕在化。米債券市場でのドル金利低下が外為市場のドル売り圧力を強めた。
しかし、午後に入るとFRB高官3人が相次いで講演。市場では総じてややタカ派的バイアス強しと受け止められた。
シカゴ連銀グールズビー総裁の発言では「トランプ関税のインフレ圧力はコロナ並み」との一節が見出しとなって独り歩きした感がある。
更に、アトランタ連銀ボスティック総裁は「中立金利は3.0~3.5%」と明言して、まだ政策金利を景気抑制的な水準に据え置く可能性を示唆した。
折から、もう一段のドル売り攻撃に出る準備中であった短期投機筋の出鼻をくじくかの如きタイミングであった。
因みに、量的引き締めに関する発言はなかった。
なお、「トランプ氏のゼレンスキー独裁者発言」が安全通貨としての円へのマネー流入を誘発したとの見解もあるので確認してみたが一笑に付された。日本だけがトランプ禍の中で例外扱いされることは楽観的過ぎる。国内政治が政党乱立状態の国が発行する通貨を安全通貨と言えるか。などなど、瞬時に否定的反応が噴出した。NY市場において円安全通貨神話は崩れている。
総じて、2025年は外為市場において円の存在感が昨年より遥かに薄い。昨年市場を席捲した「円で儲ける」というアニマルスピリッツが今年は感じられない。少なくとも年前半のドル円相場に大きな動きは出にくい市場環境である。